中央アフリカにフランスが軍事介入した3つの理由
12月6日、フランスが国連安全保障理事会に提出していた、中央アフリカ共和国に部隊を派遣する提案が決議され、フランス軍1200名の他、アフリカ各国の軍隊から3600名を派遣することが決まりました。フランスはかつてフランス領だった国を中心に安全保障協力を続けており、今年に入っての部隊派遣は1月のマリに続き2回目です。その名の通り、アフリカ中央部に位置する小国で、なぜフランスは軍事介入に踏み切ったのでしょうか。【国際政治学者・六辻彰二】
キリスト教徒とイスラム教徒の対立
中央アフリカの一人当たりGDPは約370ドル。アフリカでも経済成長が鈍く、一方で汚職が絶えないなか、2005年に就任したフランソワ・ボジゼ大統領の退陣を求める武装勢力が結集し、2012年9月にセレカ(サンゴ語で「同盟」の意味)が設立されました。
中央アフリカでは人口の約70パーセントがキリスト教徒といわれますが、セレカは少数派のイスラム教徒がほとんどで、宗派対立が衝突の背景にあるとみられています。 内戦後のリビアなどから武器や人員が流れ込み、兵力を増したセレカの攻撃で、ボジゼ大統領は亡命し、今年3月25日にセレカのリーダー、ミシェル・ジョトディア氏が暫定大統領に就任。これに対して、フランスや周辺国は外交的な圧力を加え、18カ月以内の選挙実施をジョトディア暫定大統領に認めさせたのです。 ところが、もともとゲリラ組織の連合体であるセレカは、上層部の意向と関係なく、末端兵士がボジゼ派などとの間での戦闘を継続したばかりか、民間人への襲撃も頻発。8月には国連安保理が「中央アフリカは完全な無秩序状態に陥りつつある」と警告しています。ジョトディア政権は9月にセレカ解体を発表しましたが、メンバーのほとんどがこれを拒絶し、略奪や虐殺はさらにエスカレート。約40万人が避難民になるなど、状況が極度に悪化するなか、今回の軍事介入が決定されたのです。
フランスは「アフリカの憲兵」
フランスが部隊を派遣する背景には、人道的なもの以外に、大きく三つの理由があげられます。第一に、旧植民地はフランスにとって、重要な支持基盤であることです。治安の回復は、「アフリカの憲兵」としての存在感にとって不可欠です。 第二に、戦闘が拡大することの予防です。最近のアフリカではイスラム過激派の活動が活発で、一国の内乱は周辺国に容易に飛び火しがち。状況がより悪化させないようにすることが、介入の決定に繋がったといえます。 第三に、経済的、人的な結びつきです。中央アフリカからみてフランスは最大の貿易相手国で、ウラン鉱山の開発などがフランス企業によって進められています。在留フランス人も多く、フランス軍は3月の段階でこれを保護するために400人規模の部隊を既に派遣していました。