流通経済大入学当初は"7軍相当"、日本代表合宿への参加を機に、浦和レッズ内定「プロはゴールでなく、スタートライン」
オリンピック代表監督から受けた高評価
転機が訪れたのは、2022年の冬。千葉市内で合宿を張っていた日本代表の関係者から、中野監督のもとに1本の連絡が入る。代表の守備陣にケガ人が出たため、「トレーニングパートナーとして流通経済大の選手を一人貸してもらえないか」という相談だった。突然の申し出だったこともあり、「レギュラーでなくても、下級生でも構いません」と。そこで名前を呼ばれたのが、当時1年生の根本だった。少しずつ実力を伸ばしつつあったものの、まだ3軍相当のCチームに所属。リーグ戦の出場経験もなかった。 「びっくりしましたね。たまたま、僕だったので。代表に行くと、酒井宏樹さん(現オークランド=ニュージーランド)、上田綺世さん(現フェイエノールト=オランダ)たちがいました。練習試合では谷口彰悟選手(現シント・トロイデン=ベルギー)と交代で入り、西尾隆矢選手(現セレッソ大阪)とセンターバックを組んだんです。あのときは思いのほか、自分のプレーを出せたと思います」 JFA夢フィールドのピッチサイドで見ていた代表関係者たちは目を丸くし、「流経大のあの選手は何者なんだ」という声が上がった。視察に訪れていたパリ・オリンピック代表の大岩剛監督の目にも留まり、中野監督にすぐに報告が入った。 「大岩監督から『すごく、いいですね』と言われ、代表スタッフにも高い評価を受けていました。『どのような選手なんですか』と聞かれたんですよ。それもあって、うちでもトップチームに引き上げ、そのレベルまで育てないといけないと思いました」(中野監督)
U-22日本代表で大きくなったスケール
2年生になると、センターバックのレギュラーに抜擢され、2022年度の関東大学リーグは開幕戦からスタメン出場。同シーズンは1部リーグの残留争いに巻き込まれ、個人としてももがいていた。己をコントロールできず、メンタル的にも苦しんだが、「プロになるためには、このままではダメだ」と自らを鼓舞。自分にベクトルを向けて、課題のアジリティー、ポジショニングの向上に努めた。周囲のレベルが上がれば上がるほど、考える力がついたという。3年生からは守備の要として存在感が増し、23年4月にはパリ五輪を目指すU-22日本代表に初選出。海外遠征も経験し、さらにスケールが大きくなった。同大学OBの伊藤敦樹、安居海渡らの獲得に尽力した浦和レッズの担当スカウトは自己改善する力に舌を巻く。 「無名の存在からはい上がってきたメンタルは魅力の一つ。自ら考えて、修正できる。代表合宿に行くたびに新しいことを吸収し、うまくなっていった。左足のフィードとともに考える力は評価に値します」