パソコン通信「NIFTY-Serve」「AOL」の普及とインターネット商用化解禁[第1部 - 第5話]
杓谷:アラン・ケイがゼロックスのパロアルト研究所で開発したGUIを参考に、スティーブ・ジョブズがMacを作ったというのは有名な話ですよね。スティーブ・ジョブズは、大学中退後に潜り込んだカリグラフィー(文字を美しく見せるための手法)の講義を受講したことが、Macの美しいフォントとGUIにつながったと述べています。これは「Stay hungry, stay foolish」という名言を生んだスタンフォード大学のスピーチでも言及されていますね。
パソコン通信「NIFTY-Serve」と「AOL」
佐藤:同じ頃、「NIFTY-Serve」によるパソコン通信が普及し始めました。僕は中古のフランス車に乗っていたのですが、NIFTY-Serveのフランス車フォーラムに行くと、みんながワイパーの損傷やオイルの交換などについての情報交換をしていました。雑誌では見つけられないような情報も多く、「これはすごい」と思いました。自分のフランス車について困っていることをフォーラムで相談すると、誰かが的確な答えを返してくれたり、ニッチな話題について情報共有できたりする。パソコン通信のおもしろさを強く感じました。
杓谷:私はパソコン通信を経験したことがないので想像しにくいのですが、インターネットはすべてのコンピューターがオープンなネットワークでつながっているのに対し、パソコン通信はクローズドなネットワーク内でコンピューターが接続されているというイメージでしょうか。ニフティが運営するクローズドなネットワークのひとつが「NIFTY-Serve」で、当時最も人気があったパソコン通信だったというわけですね。
佐藤:「NIFTY-Serve」には通信に関する部屋もあって、そこでアメリカでは「AOL」(American Online)というパソコン通信が人気を集めているという情報を入手しました。AOLと接続できるローカルポイントは日本にもあり、通信キャリアのSprintが運営しているとのことでした。 接続のための電話番号なども記載されていたので、すぐに丸善にあるアメリカのPC雑誌のコーナーに行き、スターターキット付きの雑誌を購入しました。家に帰ってから適当なアメリカの住所を入力し、アクセスポイントに接続してみると、もうAOLが使える状態になっていました。すごく興奮しましたし、おもしろかったですね。 ちなみに、接続に成功した時の音声「You’ve got mail」は、後の1998年にトム・ハンクスとメグ・ライアン主演の映画『You've Got Mail』が制作されるほど、アメリカではポピュラーになりました。 Windows‘95 に対応したAOL接続ソフト4.0を使って電話回線でAOLに接続している様子