豊洲市場 開場1年 「習熟期間」から新たなブランド確立なるか
「目利きの力」+「衛生管理」豊洲の強み生かす
適温管理が特長の豊洲市場だが、夏場に場所によっては室温が上がってしまうという課題が明らかになった。 水産仲卸売場棟の1階北側には、棟の外にある積み込み場と棟内部を隔てるシャッターがある。夏場にこのシャッターの開閉に伴って高温の外気が流入し、シャッターに近い店舗では、棟の奥にある店舗よりも室温が高くなった。このため、東卸は7月下旬、都に対策を要請。都はその翌日から、空調によってシャッター付近の室温を下げる対応を行った。 湿度の高さが気になるとの声も出た。湿度が高いと、冷凍庫から出した商品が溶けやすくなるほか、結露によって包丁が錆びやすくなる。ほかに、歩行者通路などの共用部に商品が置かれ、人や商品の往来に支障をきたす事例もあった。旧築地市場内には使用者や用途の決まっていないフリースペースが複数あり、各店舗が利用できたが、豊洲市場にはスペースの“遊び”がないためだ。
東卸の早山豊理事長は、「もともと、この1年間は習熟期間だと思っていた。経験しないと分からなかった課題が見えてきたので、今後はこれらの課題を解決していきたい」と述べた。 新たな課題もあった一方で、「豊洲市場のメリットは、やっぱり適温管理」だと早山理事長はいう。「生産者からは『築地の時、夏場は商品が炎天下に置かれないかという懸念があったが、豊洲市場には安心して出荷できる』という話を聞いている」 早山理事長自身は水産仲卸売場棟内でマグロの仲卸業を営む。「自分の店で仕事をするときも、同じ室温で働けるから体が楽。築地では夏の暑い時は蒸し風呂状態だった」と振り返った。 同じく水産仲卸売場棟でマグロ仲卸業を営む飯田統一郎さんは「設備が新しくなったので、自主的な衛生管理を評価する都の認証の取得に挑めるようになった」と話す。築地市場時代は閉鎖型の施設ではないなど、設備面で認証の申請に必要な条件を満たせなかったのだという。移転後、社員とともに衛生管理のさらなる強化に力を入れ、申請の準備を進める。「長い歴史で培ってきた目利きの力に、より優れた衛生管理の力をプラスして、今後の武器にしていかねばならないと思っている」と力を込めた。