近江八幡、築100年近く現役の西洋デザイン名建築の宝庫!建築家ウィリアム・メレル・ヴォーリズの作品を建築ライターが巡ってみた
古い町並みが残る町人街。町家を改修したカフェや土産物屋などもあり、散策が楽しめる。
まちや倶楽部が管理するウォーターハウス記念館。中央の煙突と玄関のサンルームが外観のアクセントになっている。
まちや倶楽部の宮村利典(みやむら・としのり)さん。右手の模型はウォーターハウス記念館を含む3件のヴォーリズ建築(いずれも現存)が連続して立つ様子が再現されたもの。
現在は一棟貸しの宿泊施設として提供されているウォーターハウス記念館の寝室。ヴォーリズ建築のエッセンスが詰まった住宅を体験できる。
ルート途上に立つ近江八幡教会。現役の教会として使用されている。
オーディオガイド「cocokiku」の画面。アプリを立ち上げておくと、位置情報を読み取り該当の音声が流れる仕様。
市民が保存に立ち上がった、旧郵便局
ヴォーリズ記念館やハイド記念館、ウォーターハウス記念館などはヴォーリズが携わっていた事業を受け継ぎ使用されているものですが、ヴォーリズの事業とは関わりのないところで、市民の力で守られているヴォーリズ建築もあります。 それが旧八幡郵便局です。この建物は、空き家となり廃屋同然で放置されていたものを有志の市民が立ち上げた一粒の会が保存し、現在は市民や観光客が見学できるよう無料で開放されています。また会議やイベント等でも借りることができます(※貸館規定により貸館料要)。
一粒の会が活動を開始したのは今から27、8年前のこと。当時はまだヴォーリズの名もあまり知られておらず、全国でヴォーリズ建築の取り壊しが相次いでいたそうです。放置されていた旧八幡郵便局も例に漏れず解体の話がもちあがります。この愛らしい建築が失われるのは惜しいと感じた市民の方々が声を上げ、保存のための取り組みを開始。助成や寄付も受け、建物の所有者もメンバーに加わり、荒廃していた建物の再生に着手しました。改修にあたり、建物を調査するなかで度々増改築が行われていたことがわかったそう。どの部分がヴォーリズの設計した部分なのか判然としなかったものの、あくまで「今ヴォーリズが生きていたらこのようにしたいのではないか」とデザインの意図を汲み取りながら、現在の使い方に合う生きた建物になるように改修を進めているそうです。会長を務める一級建築士の伴政憲(ばん・まさのり)さんは言います。