新型BMW R1300GSの10年間分の進化はスゴい!!! 284万3000円からの高級大型バイクの世界とは
フルモデルチェンジを受けたBMW「R1300GS」が日本に上陸! 試乗した河西啓介がインプレッションを綴る。 【写真を見る】新型R1300GSの細部を徹底チェック!!!
絶対王者のモデルチェンジ
四輪の世界では、さまざまな道を走破できるタフさとユーティリティの高さを兼ね備えたSUVの人気が高い。二輪の世界でも同様だ。荒れた道から舗装路、高速道路まで道を選ばず移動できるモーターサイクルは「ツーリングエンデューロ」とカテゴライズされ(日本ではアドベンチャーバイクと呼ばれることが多い)、近年とくにシェアを伸ばしている。 本カテゴリーの先駆けとなったのが、今から40年以上前に登場したBMW「GS」シリーズ。GSとはドイツ語で「ゲレンデ(野原)」と「シュポルト(スポーツ)」の頭文字を組み合わせたもの。クルマでいえば初代レンジローバーやメルセデスのゲレンデヴァーゲンのような存在と言えるだろう。 オフロードバイクといえば何より軽さが重視され、エンジンも軽量なシングルエンジンが中心で装備も簡素だった時代、BMWは800ccのボクサーツイン・エンジンを積んだ「R80G/S」を発表した。1980年代前半、BMWはそのR80G/Sをベースにしたワークスマシンでパリ~ダカール・ラリーに参戦し、大いに活躍。そのポテンシャルの高さが証明されると、R80G/Sは大排気量エンジンの力強さとタフな車体を利してあらゆる道を走破する、ビッグオフローダーというカテゴリーの開拓者となった。 それから40年余りを経て、今はツーリングエンデューロと呼ばれるその市場で、GSシリーズは世界の6割のシェアを持つ絶対的リーダーとなった。BMWの二輪事業においても全世界約20万台の販売台数のうち約6万台を占める大黒柱となっている。その GSが10年ぶりのフルモデルチェンジを受けR1300GSとなって登場した。これは世界の二輪市場にとっての一大事なのである。
軽く、コンパクトに、シンプルに
今回、伊豆の修善寺で行われたメディア向け試乗会に参加した。試乗に先立って約1時間の商品説明、インストラクターの先導による“慣らし走行”など、異例と言えるほど念入りなインストラクションがおこなわれたが、これは前モデルの「R1250GS」からじつに90パーセント以上のパーツが刷新され、通常の試乗だけでは情報を伝えきれないため、とのこと。 プレゼンテーション資料によれば、その多岐にわたる進化のポイントを集約すれば、「コンパクト化」「軽量化」「複雑になりすぎないこと」という3つになるという。そしてこの3つ、じつは大きくひとつに括ることができる。それは「乗りやすさ、扱いやすさ」ということだ。 先述したようにこのカテゴリーの絶対的リーダーとなったGSは、モデルチェンジする毎に“より大きく、強く、高性能に”という進化を遂げてきた。その結果、圧倒的な性能と共に、一般的なライダーを尻込みさせるような敷居の高さが生まれていたことも確かだ。そこで新しいR1300GSは進化の方向を見つめ直し、多くのライダーが臆せず扱える、ということにプライオリティを置いたのだ。もちろん更なる性能向上は果たしたうえで。 実際、車両に相対すると、印象が随分変わったことに気づく。小山のように大きく感じた車体はややコンパクトになり、デザインもスマートになり厳つい印象が和らいだ。とくにヘッドライトは従来モデルの特徴だった異形二眼から、いくつもの小型LEDライトをX型に配したマトリックスデザインとなりすっきりしたが、いかにも“キング・オブ・アドベンチャー然”とした先代のデザインを好んでいた人にとっては、少し物足りなく感じるかもしれない。