[MOM4996]前橋育英GK藤原優希(3年)_キャプテンから託された腕章の意味。タイガー軍団の守護神が執念のPKストップ!
[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ Sponsored by アディダス ジャパン] [12.31 選手権2回戦 前橋育英高 2-2 PK6-5 愛工大名電高 駒沢] 【写真】「美しすぎ」「めっちゃ可愛い」柴崎岳の妻・真野恵里菜さんがプライベートショット披露 一度は終わったと思ったPK戦。再び主役になる機会が巡ってきた。今まで積み重ねてきた努力も、腕章を託してくれたキャプテンの願いも、切磋琢磨し続けてきたGK陣の想いも、すべてを背負って、この瞬間にぶつけてやる。 「もう真ん中は捨てていたので、右か左かどっちかに飛ぼうと。最後はもう『右に来る!』と思ったので、思い切り右に飛びました。止めた瞬間は一瞬頭が真っ白になって、みんなにワーって来られてから、『ああ、勝ったんだな』と思いましたね」。 前橋育英高(群馬)の背番号1を任されている絶対的守護神。GK藤原優希(3年=坂戸ディプロマッツ出身)が執念で止め切った1本のPKセーブが、チームを3回戦へと力強く導いた。 フィーリングはまったく合っていなかった。愛工大名電高(愛知)に2点のリードを追い付かれて迎えたPK戦。4人目が終わった段階で、藤原がキックと同じ方向に飛んだのはわずかに1本のみ。決められれば敗退が決定する5人目のキックは枠を外れたが、これも逆方向に飛んでいた。 加えて後半終了間際に出てきた相手の“PKキーパー”、相原諒の躍動も藤原に重圧としてのしかかる。「PKキーパーとして出てきた選手に先に2本も止められて、『自分も止めなくちゃな』というプレッシャーは感じていました」。 相手の6人目も、7人目も、読みは当たらない。ただ、1つだけ決めていることがあった。「相手のキックは真ん中が多くて、『ちょっと飛ぶのを遅らせようかな』とか、いろいろなことを考えてしまって……。でも、飛ばないで決められたら自分が後悔するだけですし、毎回『思い切り飛ぼう』と思っていました」。右か、左か。どちらかに飛ぶ。後悔のないように、思い切って、どちらかに。 左腕には赤いキャプテンマークが巻かれていた。先攻の1人目として登場したものの、相手GKにキックを止められたMF石井陽(3年)から直接譲り受けたものだ。 「陽から『オマエ、頼むよ』と言われて、キャプテンマークをもらいました。陽は去年から試合に出ていて、今年も先頭に立ってみんなのリーダーとして頑張ってくれていましたし、『外してマジでゴメン』と言っていたので、絶対に『自分が止めて勝ってやろう』と思っていました」。 先攻の前橋育英は8人目のMF竹ノ谷優駕(2年)が成功。藤原は勝負のゴールマウスに向かう。全神経を視界に集中させて、情報を得る。「蹴る前にキッカーが右向きだったというか、右に蹴ろうとしているように感じたんです」。腹は決まった。後悔のないように、思い切って、飛ぶ。「右だ!」 両手に確かな感触を残して、ボールはピッチの中に転がっていく。自分に向かってチームメイトたちが全速力で駆け寄ってくる。その中にかけがえのない“ライバル”の姿を捉えると、もう我慢できなかった。 「GK陣のみんなの代表で出ているのに、1本も止められずに負けるのだけは絶対に嫌だったので、最後に自分が止めて勝ちが決まって、西野が抱きついてきてくれた時に、涙が出てきました」。藤原も、3年間にわたって苦楽をともにしてきたGK西野心陽(3年)も、気付けば抱き合って泣いていた。 8本目にしてようやく読みが当たり、完璧に弾き出したシュートストップ。「サドンデスまで自分はさわれもしなくて、サドンデスに入ってからも味方が全員決めてくれたのに、『自分は1本も止められずに、このまま終わるのかな』と思ったんですけど、最後に1本止めて、勝てて、感情が出ましたね」。最後の最後でタイガー軍団の正守護神は、勝利の主役の座を鮮やかにさらっていった。 練習は重ねてきていた。インターハイの群馬県予選。前橋育英は準決勝で共愛学園高と対峙し、PK戦の末に無念の敗退を突き付けられる。藤原は相手のキックを1本は止めたものの、結果的にチームを勝利に導けなかった自分が、ただただ不甲斐なかった。 「インハイで負けた時は自分が大事なところで止められなくて、『PK戦はキーパーが止めないと勝てない』ということを改めて感じたので、そこは自分のせいで負けたぐらいの責任を持ちながら、こういうトーナメントでPK戦になった時に絶対後悔しないように、PKは重ねて練習してきました」。 山田監督も「藤原はもともとPKは得意な方なので、PK戦で勝つチャンスは絶対あるなと思っていました」と信頼感を口にする。半年前の屈辱をバネに重ねた努力は、極限の緊張感の中で自分を裏切らなかったということだろう。 昨年のチームが突破できなかった、2回戦の壁は何とか超えた。ここからも当然シビアな戦いが続いていくが、もう1つ1つ目の前の試合に、全力を注ぎ込むだけだ。藤原の決意が力強く響く。「去年のチームを超えることがまずは第一の目標で、そこを超えたからには、もうあとは上まで突き進むだけなので、このまま国立を目指して頑張ります」。 チームの代表として、GK陣の代表として、ゴールマウスに立つ自分が、次も必ず勝利を引き寄せてやる。託された想いを背負える、前橋育英のエネルギッシュな門番。藤原優希がいよいよ乗ってきた。 高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチおめでとう!アディダスはサッカーに打ち込むすべての部活生を応援しています。 (取材・文 土屋雅史)