テレビ中継で全国へ漏れた「心の声」 一発退場も「よっしゃ」…GKが放った無意識の一言
帝京大可児の3年GK緒方琉太がピッチに立った瞬間
「よっしゃ!!」 チームの絶対的なピンチに、ベンチスタートとなっていた3年生GKから出てきたのは憧れ続けた舞台に立てる喜びの声だった。1月2日に行われた第103回高校サッカー選手権3回戦の前橋育英高(群馬)戦の前半33分、帝京大可児(岐阜)は2年生GK水野稜がペナルティエリア外で相手選手を倒し、決定機阻止で一発退場となってしまう。帝京大可児のベンチを温めていたGK緒方琉太は、この時、自身が思わず発した声がゴール裏にいたレポーターに拾われ、テレビ中継で紹介されていたことは当然知らない。 【実際の動画】スクランブル出場のGK緒方、右手一本で魅せたスーパーセーブ スタートから劇的な試合だった。前橋育英はFWオノノジュ慶吏が前半6分と8分に立て続けに2ゴールを挙げる。一方的な試合になるかと思われたが、ここから帝京可児が盛り返し、同16分にMF明石望来、同27分にFW加藤隆也がゴールを決めて2-2の同点になった。次の一点が極めて大きなものになることが明白な状況で、最終ラインの裏に出されたパスを受けた相手に対応した水野は、ファウルでピンチを防ぎ、その代償としてレッドカードを提示された。 ピッチの外に出た水野は数的不利になった責任を感じ、号泣しながらロッカールームへと向かった。一方、チームのアクシデントでピッチに立つことになった緒方は、「よっしゃ!」については無意識であり、放送されたことを知ると「マジか……心の声が出ちゃいましたね」と苦笑した。だが、ピッチに入る時に自身が笑っていたことについては、自覚があった。 「春先からあまり自分の出場機会がなかったなかで、今日、こうして出場時間が得られて『楽しむ』ことだけを考えていました。緊張とかはまったくなく、とにかく楽しかったです」 緒方自身、最後に公式戦に出場した正確な日については「覚えていない。多分、10月くらい」だったという。2年生の正GK水野とは関係が悪いわけではない。練習でともにハードなトレーニングをこなすことはもちろん、試合前の集合写真撮影が終わると、水野に水を手渡し、抱き合って「思い切ってやってこい」と、一声かけるのが2人の間のルーティンになっていた。それでも選手権の舞台に立てる興奮を、緒方は抑えきれなかったのだ。 昨年の選手権、2年生だった緒方は背番号25を与えられたが、ベンチ入りはできなかった。「悔しい思いをして、その悔しさを忘れずにずっと積み重ねてきた」緒方だったが、正GKのポジションはつかめずに、再びバックアップという立場になってしまう。