片岡愛之助 演じる者の心構えと役作り「その瞬間を嘘なく生きること」
歌舞伎俳優として、そして映画やドラマの俳優として存在感を放つ片岡愛之助。現在51歳、ますます芝居の道を邁進している。演じる者としての心構えや役作りについて聞いた。
「僕は舞台畑で育った人間」歌舞伎は生活の一部
「僕は舞台畑で育った人間で、歌舞伎の公演に向かうときは自然体というか生活のリズムのなかに歌舞伎があるんです。何十年とやっていますから、もはや生活の一部なんです。もちろん、いい意味での緊張感はあるのですが」 1972年、大阪府堺市の出身。1977年に松竹芸能の子役オーディションに合格したことを機に演技の世界に入り幼くして経験を積んだ。1979年にはNHKのドラマ『欲しがりません勝つまでは』でドラマ初出演を飾るとともに歌舞伎の舞台にも子役で出演する。そして1981年には京都南座『勧進帳』で歌舞伎俳優として片岡千代丸を名乗り、初舞台を踏み、1994年に名題昇進。まさに役者ひとすじの人生だ。 愛之助は2003年のテレビ時代劇『夜桜お染』を皮切りに2011年の連続ドラマ『ハガネの女』シーズン2で現代劇にも出演、以後『半沢直樹』のエリート官僚役など映像の世界でも存在感を増してきた。舞台と映像の両方で役者を経験している。 「役を構築していくうえでは映像も舞台も一緒です。人として役を生きるわけですから」
最新作で見せる静の演技
そんな役者一途な愛之助だが、最新映画『キングダム 運命の炎』(佐藤信介監督、7月28日公開)ではアクションなど動きのない役柄、副将・馮忌(ふうき)を演じている。静と動でいえば静の演技。深い表現力が求められる。 「『キングダム』は原作漫画から好きで映画も観ていて、どんな役でも出演したいなと思っていたので、お話をいただいたときは嬉しかったです。馮忌は頭脳の人。激しい立ち回りがあるわけでもないですし、ポイントは動かないこと。常に頭の中で自問自答しながら戦況を考えていて、セリフも独り言が多いんです。とにかく出演できて嬉しくて、出来上がった作品を観たときは感動しました」 撮影現場は広大だったという。本来は中国で全編撮影も予定されていたが、コロナ禍の影響等もあり実景を中国で撮って合戦シーンは日本で撮った。 「ロケ現場に行ったら、これは迫力あるものになるなと思いました。あとで中国で撮影した背景と合成するためにグリーンバックという緑色の幕を張るのですが、それがとにかく広大なスケールでびっくりです」 その通り迫力のある合戦シーンとなったが、愛之助演じる馮忌は指揮をする人物なのでほとんど動かない。 「監督から馬の稽古に行っておいてくれと言われたので稽古に行って準備していたのですが……実際の撮影ではほとんど動くことがなくて。本当は僕も馬に乗って走りたかったんですけどね」 白い歯を見せる。