“壊し屋”サージェント外してルーキー起用。ウイリアムズF1のドライバー選択は理に適っているのか?
サージェントの後任はルーキーでいいのか?
苦しい現状を打破するために、ウイリアムズはアルボンと並んですぐにポイント争いができる速くて安定した手腕の持ち主が必要だった。ただ選ばれたのはルーキーのコラピント。一見すると不可解な判断のように思える。 アルゼンチン出身の21歳コラピントは、チームの育成プログラムから今年はFIA F2に参戦。アブダビでのルーキーテストに参加した後、今年のイギリスGPではフリー走行1回目に出走し、F1公式セッションデビューを果たした。 motorsport.comがコラピントのFP1出走に関してボウルズ代表に訪ねた際、彼はこう答えていた。 「非常に好調なF2シーズンのご褒美だった。我々が強力な若手ドライバープログラムを持っていると改めて認識するのは好きなことだ」 「ドライバーをマシンに乗せるのが早すぎると、“やけど”を負うと私は考えている。現代のF1では、ルーキーがリザルトに関して苦戦を強いられているのが分かるはずだ」 「実際、彼らに対する我々の投資や取り組みは、いかに旧車で走らせてあげられるか、ステップアップできると我々が選んだ時に事実上最強のポジションにいるかを確かめる準備にどれだけ時間をかけられるかだ。今のところ、フランコに我々は提供できていない」 F1デビューを果たす時にコラピントが“最強の状態”でいられるかどうかは分からない。しかしイギリスGPで堅実な仕事をし、その後のメディア対応でも大人びた印象を与えていた。 コラピントは失うモノが何も無いとわかっている。滑り込んだウイリアムズのシートは、残り9戦の出来にかかわらず、2025年にはサインツJr.のモノになることが決まっているからだ。 しかしウイリアムズは、チームの若手育成プログラムに衆目を集めるだけでなく、コラピントがF1とF2の両方でどんな走りを見せるのか気になっているに違いない。 また、ウイリアムズはサージェントの後任を選ぶ際に“よりどりみどり”という状況ではなかった。コラピント起用が発表される前には、メルセデスのリザーブドライバーで世界耐久選手権(WEC)にはアルピーヌから出場するミック・シューマッハーや、レッドブルのリザーブドライバーであるリアム・ローソンが候補に挙がっていた。 メルセデスのトト・ウルフ代表のように、低迷したハースでの2シーズンではシューマッハーの真の実力が見えていなかったと感じる者もいれば、F2チャンピオンながらF1シートを掴めなかったフェリペ・ドルゴビッチなどとは異なり、F1のチャンスを手にしていたと主張する者もいる。 またシューマッハーのF1でのクラッシュの多さから、ウイリアムズはまた不安定なドライバーに手を焼くことを恐れたかもしれない。 昨年、負傷したダニエル・リカルドの代役としてアルファタウリからF1代役出走を果たし、印象的な成績を残したローソンも、ウイリアムズにとっては最も論理的な選択肢だったはずだ。 レッドブルは来年、ローソンに対して陣営内外を問わずF1シートを提供することを約束しているよう。今季の残り9レースに出場する機会を与えることは、すでに結果を出せることを証明していたとしても、完璧な準備期間になったはずだ。 しかしローソンがレッドブルのリザーブドライバーとして、2チーム4シートをカバーするということが、契約締結に至らなかった原因だと考えられる。 「どの条件かにもよるだろうが、もし我々が彼を必要とするならば、かなり早くに戻すことができる」 レッドブルのクリスチャン・ホーナー代表はそう語った。 「しかし、もし彼らが来週末にドライバーを必要としているのであれば、我々はそれに対してオープンだ」 残り9レースで一貫性と結果を求めているウイリアムズにとって、レッドブル陣営の4名のドライバーのうちひとりが欠場すればローソンを急遽返さなければいけないという状況は、リスクが大きすぎたのかもしれない。 実績のないコラピントを起用する大胆な決断もまたリスクではあるが、どの判断が吉と出るか凶と出るかは時間が経ってみなければ分からない。しかしウイリアムズには、育成上がりのサージェントの続投を断念したとはいえ、少なくとも将来有望なアカデミー生の才能を開花させようという気概があるようだ。
Filip Cleeren