【ヤマハ MT-09 試乗】□アウトロー□がスポーツバイクの王道に則った進化を遂げた…伊丹孝裕
この他にも、エンジン懸架やヘッドパイプ付近の剛性チューニング、前後サスペンションのバネレートや減衰特性の見直し、リンクの変更等の効果も手伝って、車体に入力した時のレスポンスが向上。意図的にハンドルを抑え込むようなストリートファイター的な要素が間引かれ、スポーツネイキッドとして一体感が高められている。
◆走っているだけで高揚感の中に身を浸すことができる
CP3と呼ばれる直列3気筒エンジンは、今やヤマハの大きな柱になった。低回転域での扱いやすさと力強さ、中高回転域におけるリニアなレスポンスとビートの効いたサウンドは、このモデルにもしっかりと引き継がれている。中でも音質に関しては一歩進み、エアクリーナーボックスカバーに設けられた開口部(アコースティックアンプリファイヤグリルと呼ばれる)によって、吸気音を増幅。トルク感や加速感を聴覚からも得られるように作り込まれている。
今回の試乗は街中だったこともあり、とりわけ、このサウンドデザインの効果は分かりやすく、いかにもビッグバイクを操っているという満足感を満たしてくれるものだった。スローペースで走っている時は、車体後方からザラついた排気音が耳をくすぐり、スロットル開度を大きく、あるいは開け閉めを繰り返した時は、胸元から高周波の吸気音が広がるのだから、ただ走っているだけで高揚感の中に身を浸すことができる。
MT-09には少なからずアウトローな雰囲気が漂うが、高い一体感をもたらすライディングポジション、俊敏性と安定性を兼ね備えた軽量高剛性な車体、右手ひとつで自在に操れるトルクフルなエンジン……といった要素は、スポーツバイクの王道に則ったものであり、今回の最新型でさらなる進化を遂げている。
■5つ星評価 パワーソース:★★★★★ ハンドリング:★★★★ 扱いやすさ:★★★★ 快適性:★★★ オススメ度:★★★★
伊丹孝裕|モーターサイクルジャーナリスト 1971年京都生まれ。1998年にネコ・パブリッシングへ入社。2005年、同社発刊の2輪専門誌『クラブマン』の編集長に就任し、2007年に退社。以後、フリーランスのライターとして、2輪と4輪媒体を中心に執筆を行っている。レーシングライダーとしても活動し、これまでマン島TTやパイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム、鈴鹿8時間耐久ロードレースといった国内外のレースに参戦。サーキット走行会や試乗会ではインストラクターも務めている。
レスポンス 伊丹孝裕