世界一になって親から言われた「これでやめられるね」、梅原大吾が頂点を極めて見た景色は
「世界大会で優勝したときに、親から『これでやめられるね』と言われました。どんなにゲームに熱中していてもやめろと言われたことはなかったけど、これ以上の肩書はないし、いい区切りだと思ったのでしょう。学校でも少し浮いた存在になっていて、中高生時代は周りのみんなに合わせるのがすごく息苦しかったですね。同級生に『ゲームを極めて将来、何になるの?』と言われたこともあります。僕は何も言い返せませんでした。
正直、自分でもやめたいと思い始めていました。結局のところ、ゲームマニアの間では少しは知られる存在になったものの、ゲームに興味のない人たちは誰も僕を知らないんですよね。世界一になっても日常は何も変わらなかった。そんな現実を受け入れざるをえなかったんです。
高校卒業後は、生計を立てるためにアルバイトを転々としながら、『将来のことを考えられないダメなやつだ』という自己嫌悪のような思いを抱えていました。それでも、中毒症状のようにゲームは続けていて、国内では敵なしでした。ところが、4連覇をめざした国内大会で優勝を逃してしまいます。その頃を境に、まっとうな人間になろうと、ゲームと関わらない日々を過ごすことに決めました」