平成の将棋史(下)戦術進化とAI 「藤井フィーバー」の衝撃
コンピューターソフトがプロ棋士を凌駕
プロ棋士(人間)とコンピューターソフトが激突した将棋「電王戦」も大きなトピックでしょう。 将棋電王戦は、平成24(2012)年にすでに現役引退していた米長邦雄永世棋聖と当時の世界コンピュータ将棋選手権の優勝ソフト「ボンクラーズ」が対戦。ソフトが勝利したことでスタート。翌25年からは5人のプロ棋士対5ソフトが対決する「団体戦」形式が3年連続で行われ、人間側から見たトータルの戦績が5勝9敗1分けと負け越したことは衝撃を与えました。 その後、プロ棋士代表とソフト代表が一対一で対決する形に移行し、平成29(2017)年には、佐藤天彦叡王(名人)が登場したものの、ソフト「ponanza」に2連敗しました。 電王戦は「ニコニコ生放送」でインターネット中継され、「ソフトがどれだけ強くなっているのか」との関心も高く、大きな話題になりました。古作さんは「主催のドワンゴも見せる工夫などに力を入れ、世間の注目を集めたことは大きい。AIが人間を追い越していく激動の時代を見せたのは良かったのではないか。現在ではプロ棋士も含めAIを研究ツールとして駆使することが当たり前になっている」と話します。 一方、ソフトの進化は、平成28(2016)年の将棋ソフト不正使用疑惑にもつながりました。最終的には不正行為を認めるに足る証拠はないと結論づけられたものの、一時は将棋界全体を揺るがす問題となりました。対局規定を見直すなどの予防策が取られましたが、今後も課題が残っているともいえます。 平成後期には、それまでタイトル戦にほぼ限定されていた公式戦の生中継が、ネットのニコニコ生放送やAbema TVのほか、CS放送・ケーブルテレビで視聴できる囲碁・将棋専門チャンネルなどで急速に増え、将棋はあまりプレーしないが、生中継は熱心に観戦する「観る将」も増えました。棋士が昼食やおやつに何を注文したかなども関心を集め、「将棋めし」という言葉も流行しました。