キオクシア上場に厳しい視線、NAND懸念で国産半導体復活の道険し
(ブルームバーグ): キオクシアホールディングスは、世界をリードした経験もあるこれまでの実績と日本政府が強力に支援する国内半導体産業の復活の象徴として華々しく株式市場にデビューするはずだった。しかし、投資家からは足元の業況に冷ややかな視線が注がれ、事前の予想を覆し初値は厳しい結果となる可能性がある。
キオクシアは日本を代表する総合電機メーカーだった東芝の半導体部門としてスマートフォンやデータセンターのサーバーに情報を保存するNAND型フラッシュメモリーを1980年代に発明し、量産化に成功したパイオニア企業だ。出資する米投資会社のベインキャピタルや韓国の半導体メーカーであるSKハイニックス、米半導体のウエスタンデジタルのほか、日本政府も巻き込んだ複雑で広範囲にわたる交渉の末、18日に東京証券取引所プライム市場に新規上場(IPO)する。
投資家は、NANDの市況低迷が長引いている点に懸念を示している。データセンター建設の復活が価格を支えてはいるものの、業界全体としては力強い回復には至っていない。キオクシアのIPO価格は仮条件で提示した上限と下限の中央値で決定され、仮条件を示した24年の上場案件のうち、Terra Droneに続き上限を下回る2例目となった。
三菱UFJアセットマネジメントの友利啓明エグゼクティブファンドマネジャーは、仮条件が示された際に感じた需要の強さはないように見えるとし、「メモリー市況が良くないことが背景にある」との認識を示した。
ニッセイアセットマネジメントの伊藤琢チーフ株式ファンドマネージャーも「短期カタリストに乏しい印象を強く持った」と言う。中長期ではデータ生成需要の拡大でNANDの需要も伸びる可能性はあるが、競合製品が多いコモディティーでもあり、需給や価格変動が速く、業績のボラティリティーも高いと指摘する。
苦い「記憶」で失った企業「価値」
キオクシアの社名は日本語の「記憶」とギリシャ語で価値を意味する「アクシア」の造語だ。その企業価値は、親会社東芝の不祥事と世界との半導体競争に敗れた苦い記憶により、かつて業界を席巻した当時と比べると輝きは失われている。