キオクシア上場に厳しい視線、NAND懸念で国産半導体復活の道険し
東芝は不正会計と米原子炉メーカーのウエスチングハウスの買収失敗で巨額の損失に苦しんだ結果、半導体事業への投資は長らく低迷し、その間にライバルだったサムスン電子やSKなど韓国勢の台頭を許した。新型コロナウイルス禍後のスマホ需要低迷の逆風も受け、目先はトランプ米次期政権が中国に対し半導体規制を強化する可能性もリスク要因だ。
キオクシアの公開価格1455円を基にした上場時の時価総額は約7840億円。これは、キオクシアの前身である旧東芝メモリが2018年にベイン主導の日米韓連合に売却された際の約2兆円を下回っている。
活路はAIブーム
世界的な人工知能(AI)ブームは、キオクシアの成長に残された活路だ。フラッシュメモリーは現在、従来の磁気ハードドライブに代わりサーバーや高性能コンピューター内のストレージデバイスに広く使用され、マイクロソフトやアマゾン・ドット・コムなど米大型テクノロジー企業によるデータセンターへの数十兆ドル規模に及ぶ投資の恩恵を受ける可能性がある。
しかし、キオクシアが特化しているNANDは米エヌビディアの最も強力なAIアクセラレーターの性能向上に不可欠な高帯域幅メモリ(HBM)ほど恩恵を受けられないかもしれない。さらに、今回調達した資金で生産能力を拡大し、競合のサムスンに追いつくことができるか、次世代技術の研究にどこまで資金投下できるかどうかもキオクシアの課題で、市場の関心事だ。
ニッセイAMの伊藤氏は「もっと割安感がないと、バリュー投資家もグロース投資家も行きづらい」と指摘。現時点であえてキオクシアをポートフォリオに組み入れる根拠を欠いていると話す。
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Yasutaka Tamura, Yuki Furukawa