これほどグッとくるタイトルの映画はなかなかないです【みうらじゅんの映画チラシ放談】『MR.JIMMY ミスター・ジミー レッド・ツェッペリンに全てを捧げた男』『エマニュエル』
みうらじゅんさんの前に近々公開される映画のチラシを大量にお持ちして、グッとくるチラシを厳正にピックアップ。映画本編は観ていないので事前知識はほぼゼロ、頼りになるのはチラシ内の情報(と妄想)だけという状態で語っていただく、言いっぱなしの映画チラシ放談です。(ぴあアプリ「みうらじゅんの映画チラシ放談」より転載) 【全ての画像】『MR.JIMMY ミスター・ジミー レッド・ツェッペリンに全てを捧げた男』『エマニュエル』
『MR.JIMMY ミスター・ジミー レッド・ツェッペリンに全てを捧げた男』
── 今回の1枚目のチラシは、レッド・ツェッペリンのギタリスト、ジミー・ペイジの再現パフォーマンスで知られるミュージシャン、ジミー桜井さんのドキュメンタリー『MR.JIMMY ミスター・ジミー レッド・ツェッペリンに全てを捧げた男』です。 みうら これほどグッとくるタイトルの映画はなかなかないですよね。 ── ジミー桜井さんのこと、ご存知でしたか? みうら いや、僕は“東ボブ”こと、東京ボブ・ディランさんしか知りませんが、このチラシ見たとき「本当、よかった!」って思ったんです。だって、チラシの左下に、このジミー桜井さんとジミー・ペイジさんが一緒に並んで写っておられる写真がありますよね。 ── はい、そうですね。 みうら 夢が叶ったんですよね! ジミー・ペイジさんに影響を受けたギタリストの方って世界中にたくさんおられるし、ジミー・ペイジさんそのものになりたかった人もいっぱいおられると思うんですけどね。 人生で挫折も味わい、無理だと思って諦めたり、いろいろ考えた結果、次の夢に向かって人生の設計を立て直したりする人がほとんどでしょう。でも、この方は極められ、本人からお墨付きをもらった。それって、やっぱり並大抵の努力ではないと思うんですよね。 多くの人が途中で挫折することを続けるっていうのも、やはりKEEP ON ROCK'N ROLLの賜物です。僕の友だちにもツェッペリンの真似して高校時代に学園祭に出てた者がいました。でも、フツーは辞めちゃうんですよね。しかし、この方はとうとう“ミスター・ジミー”と呼ばれるまでになられたわけですから。本当、スゴイです。 ── 確かにタイトルの“ミスター・ジミー”もジミー・ペイジのことじゃなくて、ジミー桜井さんですもんね。 みうら そこですよね。チラシの写真を見る限り、映画『レッド・ツェッペリン/狂熱のライブ』の頃のジミー・ペイジさんのスタイルですよね。きっと本物のジミーさんが見ても、「そうそう、オレってそうだったよ!」って再確認ができるというかね。その時代だけじゃなく、きっとジミー・ペイジさんの一生を演じられるのではと? ── 実はこの映画、もう観てるんですけど……。 みうら でしたか(笑)。 ── ジミー桜井さんって、どの時代のジミー・ペイジも演奏するんですよ。 みうら やっぱ、スゴイですね! ── ツェッペリン解散後のザ・ファームとかも演奏されていました。例えば「今日は何年のツェッペリンの、どこの会場のライブの再現をするので、69年以前のスタイルのソロは絶対に弾きません」みたいなことを言う人なんです。 みうら そりゃ、こだわりはハンパないでしょうね。 ── しかも、どれだけものまねが凄くても、なかなか1本の映画にまではならないですよね。 みうら ですね。そこがこの映画の興味深いところです。 ── さっきみうらさんも触れていたこのドラゴンスーツも、ドキュメンタリーの中で特注で作ってる場面があるんですけど、細かいところを衣装担当の人にすごいダメ出しするんですよ。「腕を上げたときにこの角度になるように見せたいんだ!」みたいな。 みうら 衣装のこだわりもハンパないってことですね。テルミンを操るときの角度でしょうかねぇ。そりゃあツェッペリンファンは垂涎映画ですよね。 ── チラシにジミー桜井さんとジミー・ペイジが一緒に写ってるのも、ジミー・ペイジが東京のライブハウスに観に来たそうなんです、ジミー桜井さんのライブを。それで「今日は何年のをやってくれたんだよね」って言ったらしいんです。それって「ありがとう、俺が20何歳のときの演奏をしてくれたね」みたいなことですよね。 みうら うわぁ、本当に来られててですか。そりゃ、スゴイ! もはや無我の境地「自分なくし」ですよね。誰しもができることじゃないですよ。唯一無二の自分なくしですからね。 ── ちなみにみうらさんが「本人と会えたんだね」っておっしゃいましたけど、それって映画の序盤なんです。 みうら ええ!? ようやく会えてよかったね、めでたしめでたしで終わるわけじゃないんですね。いやあ、正しく人間ロック宝ですね、ジミー桜井さんは!