どうなる対日・対中政策? バイデン政権の外交・安保 慶應義塾大・渡辺靖教授に聞く
ジョー・バイデン氏が第46代米大統領に就任する。2009~2017年までオバマ大統領を副大統領とした支えたバイデン氏の政権は“第3次オバマ政権”と言われることもある。しかし、中国が国際社会で存在感を増すなど国際的なパワーバランスが変わってきており、オバマ政権時代とは異なる課題と向き合うことになりそうだ。もちろん、激しい選挙戦を展開したトランプ氏とも違う路線を歩むとみられている。対日政策を含め、バイデン政権はどのような外交・安保政策を展開するのだろうか。アメリカ研究が専門の慶應義塾大学SFC教授、渡辺靖氏に聞いた。
オバマ路線継承の“エネルギー安保”
――外交・安保政策でオバマ政権から継承するのはどのような分野でしょう。 バイデンさんはトランプさんとの討論会で、「石油産業からの脱却」を打ち出しました。クリーンエネルギー、再生可能エネルギーに切り替えていくとの方針は、特に石油産業に頼っている人が多いペンシルベニアなどの州においてはかなり致命的なくらい失言だと指摘されました。 しかし、若い世代というのは石油産業よりも、むしろ再生可能エネルギーとか気候変動に関心が高い傾向があり、マイナスだけに働いたかというとそうでもなかったと思います。 エネルギーを自ら創出することで他国に頼る必要がなくなり、安全保障上も非常に大きな意味を持ちます。単に道義的な観点から環境問題を考えるのではなくて、経済や安全保障にもリンクさせて考えるという姿勢はオバマ政権時にかなり明確に打ち出され、その路線をバイデンさんも引き継ぐということでしょう。
対中政策に求められる「バランス」
――オバマ政権とは異なるポイントはどこでしょう。 オバマ政権時に比べると、アメリカの世論が中国に対して厳しくなっており、オバマ政権よりも中国に対して厳しい態度で臨むと思います。トランプ政権時代から対中国の(厳しい)法案は超党派で合意しているので、この傾向は変わらないと思います。特にハイテクに関しては安全保障にも直結している問題です。そう簡単にはこぶしは降ろさないでしょう。 ただ、「関税で制裁をかけていくトランプさんのやり方は結果的にはアメリカの雇用をも傷つけてしまった」というのがバイデンさんの主張なので、関税は何かしらの条件を付けながらも徐々に下げていくと思います。 中国の人権問題や海洋進出に関し、よりタフな姿勢を示していくという面と、環境問題などで中国と協力していく部分で、どうバランスをとっていくのかは難しいところです。オバマ政権ではパリ協定(※)などをまとめたくて、海洋進出など中国の野心的な行動に少し目をつむってしまったことが、批判の的になっています。 その批判は当然バイデンさんの外交チームは知っています。中国とグローバルな問題に取り組む際に、どこまで譲歩を迫られるか、あるいはタフなポジションを貫けるかがポイントになるかとは思います。 (※)2020年以降の温室効果ガス排出削減などのための国際枠組み