米大統領選、今後の注目ポイントは? バイデン・トランプ両氏の“足元”と“その先” 渡辺靖・慶應大教授に聞く
米大統領選から1か月超。各州の集計結果から、民主党のジョー・バイデン前副大統領が勝利を確実にしており、政権移行も始めている。12月8日(日本時間9日)には各州の選挙人が確定。14日(同15日)には選挙人らによる投票が行われ、着々と「バイデン大統領」誕生に向けた手続きが進みそうだ。一方で、ドナルド・トランプ大統領は選挙で不正があったと訴え、敗北を認めていない。1月20日(同21日)に新大統領の就任式を控える中、両氏がいま置かれている状況と、これから注目されるポイントはどこなのか、アメリカ研究が専門の慶應義塾大学SFC教授、渡辺靖氏に聞いた。
バイデン氏、上院との“ねじれ”が焦点
――バイデン陣営への政権移行が始まりました。 これは大きな動きです。バイデンさんの政策の、特に対外政策に対して、大枠のところはこれまでも公表されていましたけれども、細かい部分は今一つ見えなかった。それはやむを得なくて、引継ぎで本来得られるべき機密情報にアクセスできなかったので、具体的な戦略を立てることができなかったのだと思います。でもこれからもう少し具体的な方向に動き出すのではないでしょうか。 ――内政ではオバマ政権が推し進め、トランプ大統領が否定的だった「オバマケア(全国民の保険加入を目指した医療保険制度)」などに注力するのでしょうか。 オバマケアを廃止するのではなく、むしろ拡充していくということですね。ただ、そういうことが果たしてどこまで実現できるかというのは、1月5日(同6日)に結果が判明するであろうジョージア州での上院議員選(※)の結果次第というところがあります。 ※大統領選と同日に行われた上院議員選(任期は6年。2年ごとに3分の1ずつ入れ替わる)ではジョージア州の2議席だけが決まっていない。今回の入れ替え対象外も含め現在、確定しているのは共和党50人、民主党が48人。 ――どういうことでしょうか。 議会の上院が共和党多数となり、大統領とのねじれが生じると、予算と人事の点で大統領の提案が反対される可能性が高くなります。そのまま通すということは難しくなり、かなり妥協しなければいけない状況に追い込まれます。さもなければ何も進められないということになります。 そういう意味で、ジョージア州の議席の行方は注目度がとても高いのです。これまでは両議席とも共和党が取るのではないか、あるいは民主党が取れたとしても1議席だけだろうとみられていました。ところが、最近の世論調査を見ると民主党の方が有利だという数字が出てきました。2議席両方を民主党が取ると、副大統領になるカマラ・ハリスさんが上院の議長を兼ねるので、彼女が最後の1票を投じることになる。そうなると、民主党が数の上では多数派ということになります。 もちろん、民主党の中にもかなり保守的な人もいますし、逆に共和党でもかなりリベラルな立場の人もいます。ですから、この人たちをどう説得するかにもよりますが、一般論としてはねじれたまま政権を担うのと、上下両院とも同じ党で、ねじれなく政権をスタートするのとではとても大きな違いがあります。