都知事選で15万票以上を獲得し5位になった注目のAIエンジニア・安野貴博が語る「デジタル民主主義」の真実
――AIあんのって、やっぱりAIを普及させるために作ったんですか? 安野 いえいえ。AIを普及させたいというより、それによって何がしたいのかのほうが重要だと思っています。 都知事選の場合でいうと「選挙において候補者がどんなことを考えているのか」を聞ける場所を用意することは大切で、AIあんのは選挙期間中に約8600の回答をしているんです。これと同じだけのコミュニケーションを人間がやろうとしたら、それだけで17日間の選挙期間は終わってしまいます。 でも、それがほかの活動と同時並行でできるというのは、技術によって私のコミュニケーションが拡張したということです。実際に「AIあんのと話せたから、安野さんに票を入れました」という声もありました。 ――じゃあ、AIあんのがいることで、安野さんひとりで活動するよりも、コミュニケーションが2倍、3倍になったということですね。 安野 時間的にはそうですね。それに彼は疲れないということも大きいです。 あと、AIあんのは選挙のマーケティングとして使うという側面だけでなく、実際に「あるべき行政のプロトタイプ(試作モデル)」だと思っているんです。 「こういう助成金はあるのか?」「この行政サービスについて知りたい」とか、常日頃から東京都知事や東京都に聞きたいことってあるじゃないですか。そういうことを都がAIあんのみたいな形で提供することは意味があると思うんです。 ――それって、例えば都庁に電話すると、いろいろたらい回しにされて、「もういいや」みたいになっちゃうのをなくすということですか? 安野 そういうことを減らすことができると思います。もちろん人間じゃないと答えられないこともあると思いますが、全部がそうではないと思いますし、午後5時以降に知りたいなと思ったら、24時間質問ができる窓口を用意しておくのは都民のためになると思います。 ――AIあんのが都の職員になるということですね。 安野 そういうイメージです。 ■日本は世界の中でもAIが普及しやすい国 ――安野さんは、都知事選で使ったこうした技術を、オープンにして無料で提供すると言っていますよね。 安野 はい。私は選挙期間中ずっと「テクノロジーによって政治をアップデートしたい」ということを言ってきたつもりです。そういう意味では、私が作ったものをオープンにしていくというのは、まさにデジタル民主主義を実現するための一番効果的な一歩だと思っているんです。 「テクノロジーを使えば、こういうことができます。皆さんぜひ使ってください!」と言って、実際に使う人がたくさんいたら、私は今回の選挙で負けたとはいえ、実際に世の中は変わっていくと思っていますから。 ――今後はどうするんですか? また選挙に出るんですか? 安野 「新しい政治システムを作る」という意味で、なんらかの政治活動には関わりたいと思っています。 それにはたくさんの選択肢があって、選挙に出るのか、出ないのか。出るなら国政なのか、都政なのか、区政なのか。出ないのであれば、自治体を外からサポートするのか、中からサポートするのか。これはいろんな人の意見を聞きながら考えようと思っています。今は本当にわかんないです。言えないとかじゃなくて(笑)。