都知事選で15万票以上を獲得し5位になった注目のAIエンジニア・安野貴博が語る「デジタル民主主義」の真実
――でも、なんで長髪にしなきゃいけないと思ったんですか? 安野 私、丸刈りにしたこともあるんですけど、いろいろな髪型を経験しておくことは、人生においてプラスだと思っているからです。 ――じゃあ、30代の間はずっと長髪に? 安野 10年間ずっと長髪にはしないと思います。とりあえず、ヘアドネーション(病気などで頭髪に悩みを抱えた子供たちが使う医療用ウィッグを作るために髪の毛を提供すること)ができる長さ(31㎝以上)まで伸ばそうと思っていて、そろそろその長さになるので、あともう少しだけ伸ばしてみようかなと思っています。 ――40代になったらどんな髪型にするんですか? 安野 どうしましょう(笑)。 ■「AIあんの」は、都の職員になれる? ――ところで、なんで都知事選に出ようと思ったんですか? 安野 今年の4月に衆議院議員東京15区補欠選挙があったじゃないですか。その頃に妻と散歩をしていて、私がいつものように「公職選挙法の仕組みには問題がある」とか、「今の国政はテクノロジーを過小評価している」とか、いろいろ話をしていたんですよ。 それを聞いていた妻が「そんなに言うなら、自分が選挙に出たらいいじゃない」と言ったんです。で、最初は「何言ってんだ」みたいな感じだったんですけど、ひと晩寝て冷静に考えたら「いいアイデアだな」と思い直したんです。 ――どのへんがいいアイデアだと思ったんですか? 安野 2024年のこの時期にある技術を使えば、今まで候補者が有権者に一方的に「私はこう考える」と伝えるだけだったものが、逆に「みんなが何を言っているのかを聞く」選挙に変えられると思ったからです。それって、今までやっていなかったし、私は将来の政治はそっちの方向に行くべきだと考えているからです。 ――今までの選挙は、有権者の声をあまり聞いていなかった? 安野 そうです。われわれは「ブロードキャスト型選挙」と呼んでいるんですが、ラジオやテレビが生まれて以降、一方向的な選挙がずっと行なわれてきました。 インターネットが出てきて変わるかなと思ったんですが、誰もがなんでも言えるようにはなったけれども、その大量の情報をうまく処理できなかったので、あんまり変わりませんでした。 でも現在は、AIが人間の言葉をある程度理解して処理できるようになったので、ブロードキャストの逆の「ブロードリスニング型の選挙」ができると思ったんです。一方向から双方向に変わる。選挙期間中にみんなで「東京の未来はどうすれば良くなるか」という議論ができるのではないかと思ったんです。