ブルース・ナウマンの大規模個展が香港・大館コンテンポラリーで開催中。60年のキャリアを総覧する
米国出身のアーティスト、ブルース・ナウマンの大規模個展が、香港のアートセンター・大館コンテンポラリーで開催されている。会期は8月18日まで。 ナウマンは、20世紀後半以降の多くの芸術運動に影響を与えた。その作品は、ポスト・ミニマリズムからパフォーマンス、コンセプチュアル・アートへの転換を促し、今日でも持続的な影響を残している。 本展は、ヴェネチアのパラゾ・グラッシ美術館(ピノー・コレクション)の協力を得て、ブルース・ナウマン・スタジオと共同で企画されたもの。2021年から22年にかけて同地のプンタ・デラ・ドガーナで開催された「Bruce Nauman: Contrapposto Studies」展から着想を得ている。 キュレーションは、カルロス・バスアルド(フィラデルフィア美術館 マリオン・ボールトン・"キッピー"・ストラウド副館長兼チーフ・キュレーター)、キャロリーヌ・ブルジョワ(ピノー・コレクション チーフ・キュレーター)、ピー・リー博士(大館 美術部長)が共同で手がけている。 展覧会では、ピノー・コレクションやフィラデルフィア美術館の所蔵作品を中心に、テート、ニューヨーク近代美術館、ディア芸術財団、ソナベント・コレクション財団などから、35点の作品を展示。アーティストの60年にわたるキャリアを横断しながら、その作品に一貫して内在する基本的な要素を再考するものだ。 例えば、ネオン作品《真のアーティストは、神秘的な真実をあかすことで世界を救う(窓あるいは壁かけのサイン)》(1967)は、広告サインとしてネオンの本来の工業的な機能を利用したもので、開催地の香港の文脈とも呼応する。彫刻作品《動物のピラミッド》(1989)は17体の実物大の剥製を12フィートの高さに積み上げた作品で、貴重な毛皮や角を失った動物たちは、特徴のない、エイリアンのようなものを連想させる。 ピー・リー博士は本展について、次のようなコメントを寄せている。「この展覧会では、過去60年にわたるナウマンのパイオニア精神に注目し、過去から現在に至るまで、彼が現代アート、そして私たちが生きる世界に与えた多大な影響を紹介する。同時に、この地域の歴史的・文化的文脈のなかで、作品の持つ表現の可能性を引き出すことを期待している」。 60年にわたり、既成のジャンルの枠を打ち破り、新たな地平を開拓してきたナウマン。香港に行く機会があれば、ぜひ会場にてその実践を目撃してほしい。