なぜ阪神の株主総会は荒れなかったのか?
矢野阪神快進撃の要因は、近本―木浪―梅野のセンターラインが固まったことにある。梅野にしても2013年のドラフト4位である。ここ数年で見れば、青柳、糸原は5位指名。小野、高橋遥の2人の2位指名も戦力になっている。1位指名でも結果が出ていないのは、2014年の横山、2017年の馬場くらいだろう。 解禁を待ちかねていたかのようにタイガース関連の質問が続く。 中年男性の株主は今季の戦いに物言いをつけた。 「都市交通事業におきましては、細心の注意でミスがないように務めておられると思います。藤原球団社長(発言のママ)様が“凄い選手ばかり”と仰っておられる阪神タイガースは平均年俸が12球団で3番目に高いという本当に凄い選手が揃っていると思うのですが、現在12球団で最もミス、失策が多いという現状があります。“ミスしても勝てばいい”と首脳陣が言っておられるようですが、ミスでみすみす勝てそうな試合を落としている。都市交通事業のようにタイガースでも極力ミスを減らしていただければ、悲願のリーグ優勝も夢ではない。これは阪神ファンとしてではなく株主として株主利益を考えて申し上げています。グループとしてどう考えているかをお答えください」 今季の失策数「56」は12球団でダントツのワーストである。 これには、藤原崇起オーナー/阪急阪神HD代表取締役、阪神電鉄会長が檀上に立った。 「昨年は、ここで選手たちを鼓舞して、なんとか頑張るように(と発言しました)。今回は、本当にみなさん、そういう意味で1点差ゲームが30パーセント、それも(試合の)後半になっての点数で、なんとか逃げ切る。みなさんの最後までの応援が選手たちに響いてこういう結果になっていると思います」 データを示して今季の好調理由を紹介した。 そして「ひとりひとりのミスはございますが、今のチームは、そういうお互いの欠点を補完しあいながら、そして本人の特徴を出しながら、そういうチームを作りながら、毎日、毎日、やっています。そういう中で声援をいただき、一体感がようやく出てまいります。これからも最後の最後まで甲子園球場で、あるいはテレビの前でご声援をいただければ、きっと選手たちもミスをなくして理想のタイガースになると私は確信しておりますので、これからもよろしくお願いします」と、一席ぶった。 会場からは拍手がパラパラ。その後の質問者が、去年の株主総会に続き、藤原オーナーが自ら回答する姿勢を「素晴らしい」と評価。「手腕がある。何か特別なことをなさっているのでは」と“ヨイショ”していたが、阪神の編成や人事の最終決定権を持つ人物が、堂々と株主の前に立って自らの言葉でタイガースを語るのは、これまでのオーナーには見られなかった行動ではある。決意と責任感の表れだろう。