なぜ阪神の株主総会は荒れなかったのか?
この株主は、球団の役員に社外取締役がいないことを指摘した。つまり本社―フロントの要職を野球を知らない“電鉄マン”が占めている体制にこそ優勝から遠ざかっている要因があるのではないかと暗に批判したわけである。実は、なかなか本質をついた質問である。 この質問にも藤原オーナーが答えた。 「球団の役員ついては、どこの球団もほぼ親会社からの発展形になりますので、ほぼ社外取締役はいらっしゃらないと認識しています。阪神の球団職員の中にも、いろんな経験をしているものがおります。そのあたりが、意見を交わしながら新しいタイガースを模索するという格好になっています。ご心配はいろいろあろうかと思いますが、ハイブリッドな経営になっているかと私は思います」 いったいフロントの誰を指して「いろんな経験をしているもの」と言っているのか、現在のフロント組織のどこが「ハイブリッドな経営」なのか、よくわからない回答ではあった。この回答を聞く限り、先行きへの不安は残ったが、“タイガース劇場”は、ここで終了。矢野監督の指揮や采配、コーチ人事などを批判するような過激な提言や質問は最後まで出なかった。 過去の株主総会では、和田監督の采配を「わけのわからん采配」と批判したり「岡田元監督を来シーズンの監督にしたらどうですか」と次期監督を提言するものや、「片岡打撃コーチをなぜコーチにしたのか?」とコーチ解任を要求するものまで飛び交ったが、今年の“タイガース総会”は、荒れなかったのである。“タイガース総会”は、その時点でのファン心理を映す鏡のようなもの。つまりタイガースの戦いに対するファンの中間評定である。 「荒れなかった」という事実は、交流戦で大健闘、貯金「5」で首位・広島を2ゲーム差で追う矢野野球を株主が支持していることを示している。笑いあり、怒りあり、嘆きあり……のはずの“タイガース株主総会劇場”の演出としては、少々物足りなかったが、初めてオーナーとして出席した藤原オーナーは、さぞかし、ホッとしているのかもしれない。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)