「350km/hの男になる」小椋藍がMotoGP初ライドで見せた潜在能力と、やっぱり気になる真っ赤なアイツとは
今季、日本人として7人目の世界チャンピオンに輝いた小椋藍が、最終戦ソリダリティGP(水害のために中止になったバレンシアGPの代替開催)から2日後の11月19日、バルセロナのカタルーニャ・サーキットで開催されたMotoGPクラスの公式テストに初参加。最高峰クラスへのチャレンジをスタートさせた。 【写真で振り返る王者への道】小椋藍がチャンピオンを決めたタイGPと2024年の戦いをプレイバック…クールな小椋がさすがに嬉しそう!な勝利直後の秘蔵ショットなど 所属するのはアプリリアのサテライトチーム「トラックハウスMotoGP」。テストでは11チーム22人のレギュラーライダーとテストライダー2人を加えた24人が走行するなか、小椋は最多周回の86ラップを走り、トップタイムをマークしたアレックス・マルケス(ドゥカティ)から2.143秒差の1分40秒946を刻んで21番手だった。 初テストを終えたMoto2チャンピオンの小椋への注目度はさすがに高く、多くの報道陣に囲まれた。パドックですれ違う関係者を含め、小椋がこの日もっとも多く投げかけられた「初めて乗ったMotoGPマシンの印象は?」という質問に対する答えは、「楽しかったこともあり、大変だったこともあった」で、「何度同じことを言ったことか」と笑って付け加えた。
最高峰クラスのマシンの違い
「凄かった」という言葉に置き換えてもいいであろう「楽しかった」とは当然、1000cc300馬力と言われるMotoGPマシンの速さを指す。特に加速の凄さに圧倒されたという。だがそれにはすぐに慣れ、カタルーニャサーキットでMotoGPマシンが計測する350km/hという最高速を「確かに速かったけれど、想定内。驚くほどではなかった」と振り返った。 Moto3(単気筒/250cc)からMoto2(3気筒/765cc)に乗り換えたときは、加速と最高速だけではなく、マシンの大きさ、重さなどに対応するのに時間を要した。その時に比べれば、MotoGPマシンへの対応は「思ったほどではなかった」という。 初めてMotoGPマシンにまたがった印象は「Moto2とそれほど大きな違いはない」が、燃費やエンジントルクなどを調整するエンジンコントロールユニット(ECU)を操作するため、ハンドル周りに配置されたボタンなどはMoto2のマシンにはなかったもの。細かな部分への順応が必要となるが、初テストで重視したのはとにかく一周でも多く走ってMotoGPマシンに慣れることだった。 事前のミーティングで決まっていたのは、午前10時から午後5時までの7時間で予定周回数100周ということ。午前中に軽い転倒をしたことで予定周回数にはわずかにとどかなかったが、6周から10周前後のスティントを繰り返して86周を走った。なんでも1番というのは記録に残るものだが、「初テストで最多周回数」はMotoGPマシンに慣れるという初テストの目標を達成した証といえる。 初テストから2日後、バルセロナ市内で食事をしながら小椋の話を聞いた。印象深かったのは、彼のこんな言葉だった。 「Moto3、Moto2では、絶対に負けないといえるライダーがいたけど、MotoGPクラスには当然だけど、ひとりもいなかったですね。みんなタイトルを獲得してるライダーばかりだし、速かった。今回のテストでこれといった目標はなかったけど、トップから2秒差というのは、正直、ちょっと残念でしたね。もっと行けるんじゃないかと思っていたし……」 来季のMotoGPルーキーは3人。ドゥカティのフェルミン・アルデゲルは小椋より0.382秒速い20番手。ホンダのソムキアット・チャントラは小椋から0.349秒遅れて23番手だった。タイム的にはほぼ同じで3人とも初転倒を経験したが、1分40秒946のベストタイムに匹敵するタイムで連続ラップを刻む小椋の走りは、これまで同様着実にレベルを上げていくもので印象に残った。
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