米どころ新潟、災害級の猛暑でコシヒカリの一等級比率が平年70%→昨年5%に 想定上回る温暖化、「新之助」は窮地を救えるか #食の現在地
すわ令和の米騒動か――。現在、コメの民間在庫量が過去最少となり、全国各地のスーパーでコメの品薄状態が続いている。収穫時期は目前だが、昨年に引き続き今夏も猛暑だ。昨年、災害レベルともいわれた猛暑の影響でコシヒカリなど主力銘柄の一等級比率が過去最低にまで落ちこんだ新潟県では、2024年産米の生育状況が注視されている。もともと暑さに強くはないコシヒカリ。高温耐性のある新品種の開発が進むなか、「温暖化のスピードは想像以上に速い」と悲鳴を上げる農家も。新潟が誇るブランド米コシヒカリは、手の届かない幻の品種になってしまうのか。また、私たちの食卓に与える影響は? 農家と専門家に話を聞いた。(取材・文:山野井春絵/Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部)
続く猛暑日、農家によみがえる「苦い記憶」
昨年の夏は、観測史上もっとも暑く、残暑も厳しかった。今夏も40度に迫る猛暑日が続き、ニュースは連日、不要不急の外出を控えるようにと伝えている。 新潟県南魚沼市の米農家、「桑原農産」の桑原真吾さんは、昨年の夏の苦い記憶がよみがえる。 2023年、新潟県内の8月の月平均気温は、28の観測地点のうち 27地点で観測史上1位を更新。新潟沖の海水温度も過去最高を記録した。またフェーン現象による乾燥した熱風に3度も見舞われ、渇水にも悩まされた。猛暑は、コメの正常な生育を妨げ、コメの等級にも影響する。特に昨年は、種子が発育・肥大する登熟期の気温が高く、その影響で胚乳(白米として食べる部分)の一部または全部が白く濁る白未熟粒が多発した。その影響で平年、7割以上の県産コシヒカリが見た目と品質がよい一等米になるが、昨年は5%にまで落ちこんだという。災害級の被害に、多くの農家が肩を落とした。
「昨年の8月末に行った、最初の稲刈りが忘れられません。猛暑だったので、危機感から収穫を早めたんです。さっそく乾燥させて玄米にしたコシヒカリを見た瞬間に、『やばいな』と思いました。白未熟粒というんですが、白っぽいんです。ショックでした。スーパーへも行っていろんなコメを見てみました。そしたらみんな白いんですよ。やっぱりなあ、と」(桑原さん) コメの等級には一等、二等、三等があるが、一等のコメは、一定量の玄米のなかの欠け米や未熟米などではない整った形のコメ粒の割合(整粒歩合)が高くて虫食いがなく、透明感がある。例年多くのコシヒカリを一等米に育ててきた桑原さんだが、昨年は半分ほどが二等米になってしまった。 「等級が下がっても、おいしさにはさほど変わりはないんですけど、収入はどうしても下がってしまうので……。南魚沼でも渇水した地域は、夜の気温も下がらなくて、かなり大変だったと思います。うちの田んぼは、標高250~300mほどのところにあります。ダムから近いのと、夕立が多くて水がキープできるのと、風も抜けやすいので、まだマシなほうだったようです」