米どころ新潟、災害級の猛暑でコシヒカリの一等級比率が平年70%→昨年5%に 想定上回る温暖化、「新之助」は窮地を救えるか #食の現在地
新潟では「新之助」や「にじのきらめき」が増加傾向
現在新潟県では、この「新之助」や「にじのきらめき」の作付けが増加傾向にある。どちらも高温耐性と耐倒伏性に優れているとされる。特に新之助は、猛暑下の昨年も一等米の割合が高かった。
新潟県農林水産部農産園芸課の瀧澤明洋参事は、「昨年の猛暑で農家の異常高温に対する 危機意識が高まったことも普及の一因では」と話す。 「特に新之助は、集荷・販売の際の品質に基準が設けられているため、新たに挑戦するのは農家さんとしてもなかなか簡単ではないと思いますが、新之助はコシヒカリより生育期間が長い晩生の品種。高齢化などでコメ作りをやめる小規模農家の田んぼを引き受ける大規模農家が、『コシヒカリと収穫時期が異なる新之助なら作れる』と、取り組みをはじめたりしています。大規模農家が複数の品種を栽培することは、温暖化だけでなく、労働力を分散させることもできるので、新潟県としても早生の『ゆきん子舞』 や『こしいぶき』等の導入と併せた品種構成の見直しによるリスク分散を進めていきたいと考えています」(瀧澤さん)
桑原さんも、コシヒカリに加え、新之助、こがねもち、いのちの壱と複数の品種を栽培している。新之助の導入時には、生産工程を記録し提出するなどの手順を踏んだという。現在、コシヒカリと新之助の割合は25:9。すべて新之助にしようとは思わないのか。 「新之助は、暑さには強いんですけど、いもち病にとても弱い。今年のような、湿度が高い日が続くと出やすくなるので、かなり気をつけて見ていかないと。また、無理に収量を上げたりすると、食味が下がるという特徴があると思っているので、ここは駆け引きが必要なんです。丈夫でたくさん取れるからといって、おいしくないコメを作りたくはないので」(桑原さん) ジャーナリストの熊野さんは、「今後、コシヒカリ信仰は薄れていくだろう」と予想している。 「新之助もにじのきらめきも、最近の新品種はどれもおいしいですよ。目をつぶってコシヒカリと食べ比べて、当てることができる人がどれくらいいるでしょうか。これから、特に若い人たちは、銘柄にこだわらず、味や機能性でコメを選ぶ時代になっていくと思います。今はコシヒカリはブランドだし、高く売れるから、農家もコシヒカリを作りたいと思う。新品種を取り入れて、うまく育つという保証もないからチャレンジすることに躊躇(ちゅうちょ)する農家もあるでしょう。新品種を定着させるのにはまだまだ時間がかかります。国内外の消費をもっと推奨し、生産者と消費者がどちらも安心できる政策を考えるべきなんです」(熊野さん) 連日の猛暑に、局地的な豪雨。今年も秋の収穫が心配される。 品種改良が温暖化のスピードに追いつかなくなったとき、日本人の食糧はどうなるだろうか。当たり前のように口にしていたコメが手に入らない日が来るとしたら……? そうならないように、コメ農家や関係者たちの熱い闘いは続いている。 新品種の普及や品種改良を待つだけでなく、日本のコメを守るために何ができるかを考えるのは、農家だけが負うべき課題ではない。 --- 「#食の現在地」はYahoo!ニュースがユーザーと考えたい社会課題「ホットイシュー」の一つです。生きていく上では欠かせない毎日の食事ですが、気候変動や世界情勢の変化などが、食卓にも影響を及ぼしています。また、技術開発によるチャレンジや食品ロスの対策など、未来に向けたアクションも多く生まれています。「食」をどう守り、発展させ、楽しんでいくのか、ユーザーとともに考えます。