米どころ新潟、災害級の猛暑でコシヒカリの一等級比率が平年70%→昨年5%に 想定上回る温暖化、「新之助」は窮地を救えるか #食の現在地
新潟県は冬季の降雪から、作付け期間が太平洋側の地域と比べても短くなる。作付けの時期をずらしにくく、ほぼ同時になるので、高温障害が起きたときに広範囲で影響が出てしまうのだという。 「新潟県をはじめとする日本海側は、春先まで積雪に覆われることや、夏季の南風がフェーンとなることから、全国的に見ても温暖化の影響を大きく受けそうな地域の一つであるということで、特別に注目しているところです」(石郷岡さん)
「とにかく時間がかかる」品種改良
農研機構を中心に、温暖化に対応する品種改良の流れは2000年のはじめ頃にはじまった。本格的に注目されるようになったのは、2010年のこと。この年も、猛暑が新潟県を襲った。 「品種改良には、とにかく時間がかかります。ざっくり説明すると、おいしい品種と暑さに強い品種があったとしたら、両方のいいとこ取りをしようと、まずは親の情報を整理して、有用なものをかけ合わせる交配を行います。種子の世代を重ねていくと、最初のうちはバラバラなだけですが、3、4世代くらいたつと、それぞれの種子から得られる次の世代の特徴がそろってきます。その頃に良い個体から得た種もみから調査用の集団(系統)をいくつか作りだし、様々な特徴についての調査をはじめます。ここまでくるのに、だいたい5年程度はかかります。その後も様々な調査を繰り返して各系統の成績をまとめた後、普及想定先の県に配って試験をして1~2年データを取り、そこまでやってはじめて品種登録の申請を行います」(農研機構 作物研究部門 後藤明俊グループ長) 研究、開発。さらに普及させ、収穫に至るまでのプロセスを加味すれば、新品種リリースの難しさは想像に難くない。 たとえば新潟県の「新之助」は、2008年から開発された新品種だ。500種類の交配によって20万株の品種候補を育成し、特に「食味」に優れた株を探すところからスタートした。高温耐性を確認するために温室や石垣島で候補を栽培し、性質の安定化を図ったという。