ロードスターと並ぶ、世界一楽しめる後輪駆動車! 一部改良が行われたトヨタGR86とスバルBRZにモータージャーナリストの国沢光宏が試乗!
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コンパクトで値ごろ感が魅力の後輪駆動スポーツカー、GR86とBRZ。世界でも貴重な存在である2台が自慢の走りに磨きを掛けてきた。ドシャ降りの富士スピードウェイ・ショートコースでその進化を試す。モータージャーナリストの国沢光宏がリポートする。 【写真65枚】日本が世界に誇る後輪駆動スポーツカーのトヨタGR86とスバルBRZの改良版の詳細画像はこちら ◆アプライドD トヨタGR86とスバルBRZが発売以来3回目の小改良を受けた。トヨタはこれといったモデル毎の区分をしていないものの、スバルの場合は「アプライド」という呼び方を用いている。初期型を「アプライドA」とするため、今回試乗したモデルは「アプライドD」ということになります。もちろんGR86とBRZを同じ生産ラインで作っているため、同じタイミングでの改良を受けることになる。 改めてGR86とBRZの違いを紹介しておくと、以下3点になる。(1)ステアリング・フィールに影響を与えるフロントのハウジングがGR86はダイレクト感を重視した鋳鉄製。BRZは1.5kg軽いアルミ製。(2)リア・スタビライザーは、GR86が利きを強くするため1mm太いタイプを車体に装着。BRZではサブ・フレームに装着。(3)リア・ブレース(補強材)は、GR86が無し、BRZが有り。 普通の速度域で体感できるのが(1)の素材。アルミ素材と鋳鉄素材をヤスリで削ると、アルミの方が手に伝わる振動が少ない。アルミ素材は、振動吸収性が高いためだ。そんなことから路面から伝わるステアリング・フィールの上質感でBRZ優位。GR86は開発の最終段階で微振動の少なさを「ダイレクトカ感が薄い」と判断され、アルミを止めた。好みと言って良い。私は微振動を伝えないBRZを好む。 (2)のスタビライザー&(3)の補強材もコーナーである程度の横Gを掛けてやると違う。BRZは遊びのない一体感のある挙動を生み出す。GR86でジワッと荷重をかけると、いろんな箇所にチカラが分散するためリニア感が薄い。反面、ドカンと荷重を掛けてやると、後輪にしっかり伝わり華やかに横滑りする。これまた好みだと思う。ちなみに売れているのはGR86だったりする。 今回の改良でどうなったのか? GR86もBRZも、より楽しいクルマにするため、滑り始めの挙動を解り易くすることと、滑ってからのコントロール性を向上させるべく手を加えた。具体的には、(1)ダンパー特性の最適化。(2)電子スロットルの特性変更。(3)電動パワーステアリングのアシスト特性を改良。(4)AT車のマニュアル・ダウンシフト制御の許容回転数を1500回転ほど上げる、という内容。 ◆「いいね!」 乗るとどうか? 共通するのが電動パワーステアリングの改良だ。ベースとなっている技術はトヨタによるもの。とくにステアリングの切り始めのダイレクト感が増しており、普通に走っているときのステアリング・フィールや、ドリフト・コントロール中のコントロール性などワンランク違う。GR86であってもBRZであっても、従来型のアプライドCから乗り換えると「いいね!」と思うハズ。 (1)のダンパー特性だけれど、GR86とBRZそれぞれの持ち味を伸ばす方向でセットアップされていた。写真をご覧頂ければわかる通り、試乗会は水たまりができるほどのヘビィウェットであり、後輪駆動車にとって手強いコンディションだった。アプライドCのGR86とBRZいずれも、滑り出しの挙動が不安で思いきり攻められず。試乗会でスピンするのもカッコ悪いですから。 アプライドDはアプライドCと比べ、GR86だと大雨の中イッキにテールを流すようなハンドルの切り方をしても不安無く&思い通りにテール流れ、BRZも普通にステアリングを切り込んでいくことで車体の挙動を自由にコントロールできるようになった。ドライ路面だとそれほど大きな“進化代”は感じないかもしれないが、ウエットだとハッキリ違います。 意外だったのが電子スロットルの改良。パワースライドさせるべくアクセル・ペダルを踏んだときや、テールが流れてからのパワーコントロール時のアプライドDは「素晴らしい!」と拍手したくなる。BRZに新設された「スポーツ」というモードは、金属ワイヤーでスロットルを開閉していたときと同じリニアな制御にしたというが、後輪駆動車乗りの見果てぬ夢である「スロットルでクルマの向きを変える」ことができてしまう。 ロードスターと並び、世界一楽しめる後輪駆動車だと思う。 文=国沢光宏 写真=茂呂幸正 ■トヨタGR86 RZ(スバルBRZ S) 駆動方式 フロント縦置きエンジン後輪駆動 全長×全幅×全高 4265×1775×1310mm ホイールベース 2575mm トレッド 前/後 1520/1550mm 車両重量 1270kg エンジン形式 水平対向4気筒DOHC16V 総排気量 2387cc ボア×ストローク 94.0×86.0mm 最高出力 235ps/7000rpm 最大トルク 250Nm/3700rpm 変速機 6段MT サスペンション形式 前/後 ストラット/ダブルウィッシュボーン ブレーキ 前後 通気冷却式スチール・ディスク タイヤ 前後 215/40R18 車両価格 351万8000円(350万9000円) (ENGINE2024年11月号)
ENGINE編集部
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