よくあんな15歳の生意気なガキを仲間に入れて、面倒見てくれたなってーー中3でJ1デビュー、森本貴幸の今
2004年、J1最年少出場、同最年少得点記録、最年少でのJリーグ最優秀新人賞受賞といまだ破られぬ記録を打ち立てた「坊主頭」がいた。森本貴幸(34)。大型フォワードとして期待され、セリエAで活躍、南アフリカW杯出場など輝かしいキャリアを重ねた一方で、苦戦を強いられた時期も短くはない。パラグアイでの事故のこと、指導者を始めた今思う若き日の自身のこと、そして今後について。今年プロ生活20年目を迎える男の話は多岐に渡った。(取材・文:了戒美子/撮影:三井公一/Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部)
事故は起こしたが、ひき逃げは誤解
「今、34歳ですよ。小2と年長と年少、3人の子どもがいます」 そんな簡単な近況報告からインタビューは始まった。かつての天才少年も当然ながら一生少年のままではない。すっかり大人の話し口調だった。 直近で森本が大きな話題になったのは、2021年3月のことだろう。パラグアイ1部スポルティーボ・ルケーニョに加入直後だった当時、飲酒運転で事故を起こしたことが日本でも大きく報じられた。”ひき逃げ、逮捕、裁判沙汰”などといった報道もあった。 「そもそもは飲酒運転したのが悪かったと思います」 森本はそう言って自分から切り出した。
「あの日、外で酒を飲んで、一度寝て朝方運転して家に帰ろうとしたところだったんです。そこで事故を起こして、すぐパトカーが来て」 ―現地報道では「事故を起こしたあと怖くて家に帰って、家で逮捕された」とされていました。 「誤解なんです。家には帰ってなくて、事故後そのままパトカーで警察署に連れて行かれて、いわゆる事情聴取のようなことがあって、示談金もあっという間に決まって、翌朝帰らされました。その時、弁護士が3人も名乗り出てきたり警察署に行くパトカーの中で現金を要求されたり、驚くようなことばかりでした」 ―南米のイメージ通りというか、日本とはだいぶ事情が違うようですね? 「それでもお酒が残った状態で運転をしてはいけなかったと思っています。警察から戻った翌日から普段通りに練習していたんです」