結局、勝てばそれがベストな戦術、戦略に――前代表監督・西野朗、「ポイチ」への期待
昨年のサッカー・カタールW杯で、PK戦の末にベスト8進出を逃した日本代表。とはいえ前回に引き続いてのベスト16は日本サッカー史上初の快挙でもある。その前回ロシア大会で日本代表を率いたのが西野朗(67)。ベルギー相手に2点リードしながら大逆転を許した「ロストフの悲劇」をロシアで味わった西野は、再びの「ベスト8の壁」に何を思ったのか。監督という仕事への思いと合わせ、語ってもらった。(取材・文:了戒美子/撮影:殿村誠士/Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部)
ドーハの悲劇が一番、キツかった
2022年12月6日。テレビ中継の解説員として現地入りしていた西野は、アルジャヌーブスタジアムで呆然と立ち尽くした。カタールW杯の決勝トーナメント1回戦。クロアチアを相手に先制した日本代表は、PK戦の末に史上初のベスト8を逃した。その終了のホイッスルが響くスタジアムで、西野は微動だにせずピッチを見つめ続けていた。 「固まってましたね……。でも、今までで一番固まったのはW杯初出場がかかった30年前のドーハ(の悲劇)なんですよね。あの時も(山本)昌邦(アテネ五輪日本代表監督。ともにNHK解説を務めクロアチア戦も西野の隣で観戦)とスタンドで見ていて、試合終盤勝利を確信して、みんなと一緒に喜ぼうとピッチに降りて行こうとした瞬間、あっという中での失点に茫然。あの時ほど固まったことないんですよ。現実を受け止められなかった」 西野は日本サッカー協会の技術委員長を務めていた2018年4月、ハリルホジッチ監督解任に伴い自らが日本代表監督となり、約3か月でチームを立て直しロシアW杯を戦った。短い準備期間でベスト16に進出したものの、決勝トーナメント1回戦ベルギー戦では2点リードからひっくり返された苦い記憶がある。
「あの時は固まる前にスタッフにインタビューに連れて行かれて。頭が真っ白なまま『何かが足りなかったんですね』って言っているんですね。クロアチア戦も、まあ、固まりますよね。今大会チームが好転していく様子を見ていて、結構大差で勝てるんじゃ、とか思ってスタッフとスコア予想なんてしたりしてて。そんな自分の予想と現実とのギャップもあるし、感情移入して見ているからというのもあったから……」