女子の工学部への進学、日本はなぜ少ない? 国際調査で「数学的リテラシー1位」、男女スコア差も縮まったが
女子の工学部進学率が低い
日本ではOECDの中でも、「自然科学・数学・統計」「機械・工学・建築」など、STEM分野といわれる理工系学部に進学する女性の割合が極端に低いことがわかっています。そこで同財団は、数学的リテラシーの男女のスコア差が日本より大きいにもかかわらず、工学部の女性入学比率は日本より高い国をピックアップしました。 21年の工学部の女性入学比率を見ると、20%を超える国が多くあるなかで、日本は16%と非常に低いことがわかります。 「この表からいえることは、日本は数学をはじめとしたSTEM分野の能力や適性がある女性はたくさんいるのに、それを生かした進路選択ができていない人が多いということです」
国が主導して進めることが大事
では、女性の入学比率を増やしている国はどのような取り組みをしているのでしょうか。大洲さんらは日本と文化や政治背景が似ており、女性の入学比率が15年の22%から21年に28%と大きく増えたオーストラリアに注目し、その理由を調べてみました。 そこでわかったのは、国が強力なリーダーシップをとって、女性のSTEM政策を推し進めていることでした。産業界と教育界のリーダーが集まって、STEM教育の質を向上させて、21世紀の職業で必要とされるスキルを学生に習得させる戦略を立てています。 「オーストラリア政府は19年に『女性のSTEM10カ年計画』への取り組みを発表し、現在もプロジェクトを進行中です。STEM分野の女性比率を高めるために、政府と非営利団体が連携して、女子にプログラミング授業を提供したり、ドローンなどのハイテクやデジタル技術を教える取り組みを全国の学校とともに実施したりしています。」 表には載っていませんが、ドイツには年に1回、政府が資金提供をして支援する「ガールズデー」に、女性比率が40%未満の職業を対象に、10~15歳の女子生徒が職場体験に参加できるプログラムがあります。 「将来、女性比率が低い職種、特にSTEM分野に進学する人やSTEM分野の仕事に就く女性を増やそうというドイツの施策で、毎年、大きく報道されます。23年には、1万件以上の事業所に12万人以上の女子生徒が参加しました。また、アメリカでも多額の予算を使い、女性のほか、有色人種やLGBTQの人たちにSTEM教育を実施しています」 日本では、内閣府の男女共同参画局による「理工チャレンジ」(通称・リコチャレ)があります。他国と同様に、産官学が一緒になって理工系女性を増やす取り組みを行っていますが、予算の規模が違い、「プログラムをもっと周知させ、協力してくれる大学や企業を増やすことが大事です」と大洲さんは言います。 「私たちが財団を設立した大きなきっかけは、代表理事でメルカリ創業者の山田進太郎が、社員の多様性を求める視点からエンジニア(技術職)の女性を採用しようとしたところ、人材そのものがおらず、人が全く集まらなかったという経験によります。D&Iの観点をふまえた働き手の確保という意味でも、このミッションは急務なのです」 理工系へ進む女子学生が増えるか否かは、今後の日本社会の発展に大きな影響を与える課題です。理工系の大学の「女子枠」がどのぐらい効果を上げていくのかなど、今後の大学の取り組みと女子の動きが注目されています。
朝日新聞Thinkキャンパス