『80歳の壁』和田秀樹が提唱する、感情に振り回されないための「確率や数字で考える」習慣
これでも「自分は無関係」と言えるか?
世帯数で見ると、生活保護を受けている世帯は約164万世帯で、日本の総世帯数がだいたい5700万世帯ですから、100世帯あれば3世帯くらいは生活保護を受けているということになります。 要するに、50人に1人(50分の1)、30世帯に1世帯(30分の1)という確率で生活保護を受けている実態があるのですから、全く縁遠い数字ではありません。 人生、明日のことはわからないものです。高給取りで裕福に暮らしていたとしても、明日には会社が倒産してしまうかもしれませんし、リストラに遭うかもしれません。急な病気で仕事ができなくなるかもしれません。 たとえばうつ病の生涯有病率は、女性の場合は4人に1人、男性の場合は6人に1人と言われています。大きな災害に巻き込まれて財産をすべて失うことだって、あるかもしれません。 この確率を知りながら、「自分とは関係ない」と言い切れる人は、よほど想像力が欠けていると言えるでしょう。 感情論で「“働かざる者、食うべからず”(これももともとは、レーニンが働かないで贅沢をしている富裕層に対して使った言葉なのですが)だ。生活保護のシステムなんかやめてしまえ!」と言うのは簡単です。 しかし、自分が生活保護を受けなければならなくなる確率を考えると、弱者を救済するための非常にありがたいセーフティネットであることは、すぐわかるはずです。 こういう例を見てもわかるように、確率論で考えることは、感情に振り回された判断を避ける良い方法だと言えるわけです。
TEXT=和田秀樹