軽井沢の観光地で「タクシー不足」を解消した“3本の矢”プロジェクト
タクシーがつかまらない――。 日本を代表する別荘地であり、また年間800万人規模の観光客が訪れる長野県軽井沢町。コロナ禍以降に観光需要が一気に回復する中で、タクシー不足を訴える声が高まっていた。 【写真】軽井沢タクシー供給強化プロジェクトにより「タクシー不足」解消に動いた軽井沢 その解決に向けた切り札として、2024年2月に締結された連携協定が「軽井沢タクシー供給強化プロジェクト」だ。 町役場、タクシー協会、商工会、観光協会、ホテル旅館組合、そしてタクシーやライドシェアアプリを提供する「GO」による官民連携プロジェクトである。
特徴は、「3本の矢」施策であること。「既存タクシー車両への、タクシーアプリ『GO』の導入」「日本版ライドシェアの早期実施」、そして「隣接地域からの応援隊派遣」を、ほぼ同時に進行していることだ。 タクシー需要の繁忙期であるゴールデンウィーク、夏休み、そして紅葉の時期を経て、一定の成果が出たと同時に、今後に向けた課題も見えてきたところで、軽井沢町役場と民間事業者を取材し、その実情について詳しく聞いた。
■JR東日本、西武ホールディングスとともに 「軽井沢タクシー供給強化プロジェクト」の議論が始まったのは、2023年の夏過ぎ。 それまでも、軽井沢町の最上位計画である「第6次軽井沢町長期振興計画」の中で、観光客を含む地域移動のあり方についてビジョンを示してきた。 その一環として、2023年度(令和5年度)は「回遊軽井沢」を実施していた。これは、JR東日本と西武ホールディングスが実施していた、AIオンデマンドの地域・観光型MaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)である。
その知見を活用して本年度から始まったのが、軽井沢町独自の施策である既存タクシーを活用したオンデマンド交通だ。 一方、地域全体の交通を含めた将来のまちづくりを考えるため、地域公共交通計画のアンケート調査を本年度から来年度にかけて実施している。 また2023年2月には、土屋三千夫氏が町長に就任。民間企業での海外事業経験等を活かし、軽井沢町の次世代化を推し進めているところだ。 こうした中で、「タクシー不足」という課題については、軽井沢町として昨年の夏過ぎから地元タクシー事業者、ホテル旅館関係者、民間事業者などと解決策を模索していた。