庭植えで気軽に楽しめる!じつは育てやすくて、魅力いっぱいのエビネ
エビネは「趣味家が育てている、ちょっと気難しい植物」と思っていませんか? 近年のエビネはその正反対で、とてもフレンドリー。今までのイメージを一新し、美しさに加えて育てやすさも抜群。個性を知ると、さらに育てたくなりますよ!『趣味の園芸』2025年1月号より、一部を抜粋してお届けします。 みんなのエビネの写真
色鮮やかで育てやすい改良種に注目
エビネの仲間は、日本各地に自生しているランで、約20種の原種が自生しています。現在栽培されているものの多くは、ジエビネなど5種の原種と、それらをもとに人工的に交配してつくられたものです。 和の趣をもつ渋い美しさで根強い愛好家がいますが、近年は改良が進み、色鮮やかで花つきのよい園芸品種群が登場。分布域が異なる原種を交配することで、"耐暑性・耐寒性"が得られ、限られた地域でしか栽培されなかった系統のものも、日本の広い地域で栽培が可能になりました。 メリクロン(成長点などを無菌培養して親株と同じものをふやす増殖法)でふやされる多くの洋ランとは違い、種子繁殖が主体のため、株分けしたものでないかぎり、色も表情も1株ごとに異なるのが最大の魅力。日本に自生する原種を交配してつくられたため、丈夫で少々日当たりの悪い庭でも育てられます。
親は日本の自生種。日本の気候に合って丈夫
エビネは、もともと日本各地に自生しているランの仲間。ジエビネは北海道から沖縄までほぼ全国に、キエビネは本州中部以西に、サルメンエビネは北海道から九州にかけての冷涼地に、ニオイエビネは冬も温暖な伊豆諸島にと、さまざまな地域に分布します。 これらを人工的に交配して生まれた種類は、日本の気候に合っているため、温室などの特別な施設は必要なし。特に庭植えは、根づいたらほとんど手間をかけなくてもよく育ちます。 改良種のエビネは、複数の原種を交配して、それぞれのよいところを生かして生まれたもの。原種に比べ「花がたくさん咲く」「多くの花が前を向いて、花並びがよい」「茎が丈夫で堅い」「花色が鮮明」「葉の大きさが控えめでコンパクトにまとまる」など見た目がきれいに進化。色のバリエーションも豊富で、洋風の庭にもよく合います。
教えてくれた人/山本裕之(やまもと・ひろし) 育種家 小学生のころに牧野富太郎博士に憧れ、若いころはプラントハンターとして新種や再発見など多数。東京農業大学在学中から約50年間、エビネ、ウチョウランなどの育種を続け、2022年世界らん展日本大賞をエビネで受賞。 ●『趣味の園芸』2025年1月号「庭植えで気軽に楽しめる エビネ」より