日本競馬史上初の親子三冠へ 最大の試練となったチェリーメドゥーサの大まくり
12年に史上4頭目の3冠牝馬となったジェンティルドンナ。GI初制覇となった桜花賞、5馬身差の圧勝となったオークス、そしてハナ差の激闘となった秋華賞を振り返る。 【写真】ジェンティルドンナこれまでの軌跡 この年の牝馬クラシック戦線、ジェンティルドンナは最初から主役というわけではなかった。桜花賞の1番人気は阪神JF覇者のジョワドヴィーヴルで、前哨戦のチューリップ賞で4着に敗れていたジェンティルドンナは2番人気。以下、アイムユアーズ、ヴィルシーナ、サウンドオブハートと続いた。レースでは中団の後ろ寄りを追走。岩田康誠騎手の叱咤に応え、直線で馬場の中程から抜け出すと、内で食い下がるヴィルシーナを半馬身抑えてGI初制覇を果たした。 続くオークスは岩田騎手が騎乗停止中のため、川田将雅騎手と初コンビを組んだ。ここでも戦前、ジェンティルドンナは大本命ではなかった。それどころか単勝は3番人気。1番人気はフローラS覇者のミッドサマーフェア。2番人気はヴィルシーナだった。しかし、レースでは圧倒的なパフォーマンスで「1強」を証明する。前半1000mが59秒1というハイペースを後方追走。直線で大外からグイグイ伸びると、残り200mから後続を突き放す。終わってみれば2着のヴィルシーナに5馬身差の大楽勝。勝ち時計の2分23秒6は従来のレースレコードを1秒7も更新するレースレコードだった。 そして迎えた3冠最終戦の秋華賞。前哨戦のローズSを快勝したジェンティルドンナは、単勝1.3倍の圧倒的1番人気に支持された。しかし、結果的にこのレースが3冠の中で最も苦しいレースになるのだから、競馬は不思議なものだ。本馬場入場時にはスタンドの大歓声に驚いたのか、岩田騎手が落馬するアクシデント。これが波乱の予兆だったのかもしれない。序盤は中団を追走。しかし、向正面で小牧太騎手のチェリーメドゥーサが最後方から一気に先頭に立ち、後続との差を開いていく。後続は金縛りにあったかのように動かない。 迎えた4角、チェリーメドゥーサとジェンティルドンナとの差は、まだ10馬身以上ある。「これはさすがに届かない…」。多くのファンがそう思ったことだろう。必死に追う岩田騎手。残り50mを過ぎたところでようやくチェリーメドゥーサを捕らえ、最後は内のヴィルシーナとの追い比べ。最後は首の上げ下げとなったが、僅かに7センチ、ジェンティルドンナの鼻先が前に出たところがゴールだった。史上4頭目の牝馬3冠、そして父ディープインパクトと日本競馬史上初となる親子3冠を達成。約120秒の苦しい戦いの末につかんだ、記録尽くめの栄冠だった。