親の介護はして当たり前? “家族幻想”が強い日本の固定概念を日本人心理学者が分析...知らぬ間に子どもを束縛するケースも
思い切って親と距離を置くと、後悔よりもスッキリする人が多い
「このケースはまさに母親の思うツボです。娘に強く言えば従うことがわかっているから、そう言うのです。高齢になったことで、老いや介護を言い訳に“死にそうな母親を捨てるのか”的な発言で娘を束縛します。でも正直、言い方が悪いかもしれませんが、これは“死ぬ死ぬ詐欺”です。現在疾患があれば別ですが、日本人女性は世界的にみても平均して長生きです。今の高齢者はそんなにヤワじゃありません。だから、老いた母親の面倒を見られない自分は心が狭いとか、ずっと親といられるわけじゃないんだから親の面倒は見てあげなくちゃいけない、と思うことはありません。親といてしんどい、親の要望がつらいと感じるなら、娘側から拒絶することがあってもいいんです」 日本はいまだに家族幻想が強く、家族は仲良く、親の面倒は見てあげて当たり前、という前提で語りすぎると信田さんは指摘する。 「親がつらいと感じる元凶を築いたのは母親です。だったら、娘側から距離を置く。そんなひどいことをと思うかもしれませんが、思い切って親と距離を置くと、後悔よりもスッキリされる方がとても多い。夫や恋人など、苦しい気持ちを共有できる人がいたら頼る。最近では、毒親に関する書物もたくさん出ています。読むと、自分だけが親不孝な思考をしているわけではなく、親との関係性の問題で苦しみがあるということが理解できるでしょう。また、そういった悩みを持つ仲間同士の会もあるので、利用するのもいいと思います。親がいたから自分がいると思い、耐えてしまいがちですが、それであなたの人生を捨てることはないのですから」
From Harper's BAZAAR March 2019