遮水壁の建設と除染が進む福島第一原発 ── 4年が経過した原発構内の現状は
遮水壁と凍土壁、汚染水から海を守れるか
構内では、海側の遮水壁と陸側の凍土式による遮水壁の建設が進んでいた。前者は汚染水を構内から漏らさない方策で、後者は原子炉建屋に水を近づけない方策だ。すでに多く報道されているが、一日300トンの地下水が構内に流入している。これでも流入量は減った。半年前までは400トンだった。
バスに乗って1号機と2号機の前あたりの護岸に着いた。海側の遮水壁が見える。海面からの高さ4メートルの護岸に全長約780メートルにわたって“竹輪状”の柱が並ぶ。 前回の取材でこの付近は、放射線量が高いという理由から足早に去るように指示された場所だったが、今回は落ち着いて見ることができた。土がむき出しになっていた表面を舗装したことで、放射能を帯びた粉塵の飛散が抑えられているからだという。とはいえ放射線量は30μSvと高いことは高い。それでも1年前は3桁はあったというから、確実に下がっている。
さらにバスに乗って4号機の西側に進んだ。地面が掘り返され、凍土壁の冷却材を循環させる配管の設置が進んでいた。凍土壁というのは、地中30メートルに凍結管を打ち込み、ここに冷却材を流すことで土を凍らせ、地下水を遮断する壁のことだ。 凍土壁は、1号機から4号機をぐるりと囲むように設置される。延長は1500メートル。これが完成すれば、地下水は原子炉建屋に流れ込まなくて済むようにと考えられている。ここでは作業時間が長くなりがちだということで、作業員は被曝量を抑えるためのタングステンベストを身に付けていた。
構内南側にある廃スラッジ建屋の屋上から発電所全体を望んだ。雨に降られ、空はくすぶっていて、岸には荒々しい波が打ち付けている。雨の向こうに原子炉建屋の姿がうっすらと見える。水素爆発で吹き飛んだ屋根、燃料を取り出すクレーン、汚染水を貯めたタンクの数々が一度に目に入り、それが物悲しけな一巾の絵のようにも見えた。 この場所にいると、いろんな思いが去来する。今回の取材で被曝した放射線量は0.02mSv=20μSv。歯科のレントゲン撮影1回分。 屋上から、この景色をいつまでも見ていたいと感じていた。これもまた慣れなのだろうか。