〈パリ五輪で国威発揚図る韓国〉開会式“言い間違え”で火が付く韓国人と、冷めたフランス国内
なぜ、文化も発信するのか
コリアハウスでは、韓国・国立バレエ団による「パリの花火」「白鳥の湖」公演や野外庭園を舞台にした「韓服」ファッションショーが開催されたほか、K-POPや韓国料理などさまざまなイベントが予定されており、コリアハウスは文字どおり韓流拡散の前哨基地となっている。 なぜ、スポーツとは関係のない伝統衣装のファッションショーが五輪開催にあわせて行われたのだろうか。その背景には、22年の北京冬季五輪で韓国が味わった屈辱がある。
北京冬季五輪の開会式では、市民と民族衣装を着た56の民族代表による国旗入場の後、習近平国家主席が開会を宣言した。そして、この民族衣装の中に、中国東北部に暮らす朝鮮族の衣装「韓服」があった。 これを中国による文化の盗用と断じた韓国政府は、「韓服が世界から認められている韓国の代表的な文化の一つであることは改めて論じるまでもない」と強い懸念を表明した。 日本人には馴染みがない話だが、中韓の間には、朝鮮半島北部から中国東北部に存在した高句麗と渤海が、中国と韓国のいずれの歴史に属するのかという、根深い歴史認識の問題が横たわっている。(「北京五輪で韓国が中国に噛み付いた韓服問題の真実」) 筆者は、韓国がファッションの中心地であるパリで韓服のファッションショーを開催することで、北京冬季五輪開会式での屈辱を晴らそうとしたのだと理解している。五輪が国威発揚の場と考えられているという前提に立てば、合点がいくだろう。
フランス国内の反応は?
これまでお伝えしてきたように、韓国ではパリ五輪開会式で北朝鮮と誤ってアナウンスされたことを契機に、被差別意識が噴出しているのだが、一方の当事者であるフランス側はどう思っているのだろうか。一人の意見がフランス全体の意見を代表するものではないと承知の上で、滞日20年におよぶフランス人の言葉を紹介したい。 「日本人や韓国人はベルギーとドイツの国旗の違いが分からないでしょ? そして、オランダとベルギーの場所が、どっちなのか知らないでしょ? それと同じで、フランス人だけじゃなくて、ヨーロッパ人は韓国と北朝鮮の違いなんか分からない。地図を見て、韓国と日本を正しく指差せる人は、とても少ないと思うよ。それぐらいアジアのことを知らないんだ」 フランス人が言う国旗の違いは、それぞれ似た色の組み合わせなので、正しく識別できる日本人(おそらく韓国人も)はかなり少ないのではないか。また、英国やフランス、ドイツの位置はわかっても、大国以外の欧州諸国の位置を正しく指差せるのか、筆者も自信がない。 だからと言って、五輪の開会式で国名を間違えたことの言い訳にはならないが、これがフランス人の偽らざるべき感情なのだろう。 その証左とも言えるのが、フランス最古の日刊紙「フィガロ」が27日に掲載した「2024年パリ五輪 開会式のミスで韓国が抗議」という見出しの記事だ。ことの経緯を淡々と報じた後、驚くべき文章で記事をまとめている。 「韓国は、1950年から1953年にかけて、平和条約ではなく休戦協定で紛争を終えた。厳密に言えば、依然として北朝鮮と戦争状態にある」 この指摘は、日本人にとっては常識だ。韓国と北朝鮮がいまだ戦争状態にあることは、義務教育で習う内容だろう。しかし、これらは極東から遠く離れたフランス人にとっては、わざわざ解説しなければならないほど、実に地域的で、高等な知識なのだ。