英誌の報道「中国の日本人男児刺殺事件は起こるべくして起こった」
中国で日本人学校の児童が襲撃される事件が相次いだ。中国政府は2つの事件に「関連性はない」「どこの国でも起き得た」としているが、英誌はそこに疑問を呈し、このような悲劇が起こるのは不可避だったのではないかと指摘する。なぜなら、中国では「反日教育が徹底され、国内問題から目をそらすために反日感情が利用されている」からだ。 【画像】英誌の報道「中国の日本人男児刺殺事件は起こるべくして起こった」
それは本当に「偶発的な事件」だったのか
このような悲劇は「どこの国でも起こる可能性がある」。中国外務省の報道官は9月19日の会見で、そうコメントした。 その前日、広東省深圳で、日本人学校へ登校中の男子児童（10）が中国人男性に刃物で襲われ死亡する事件が発生した。容疑者は現場で逮捕されたが、中国当局は犯人の動機に関する情報をいっさい発表していない。 この襲撃事件は、同じく中国で数ヵ月前に起きた別の事件と酷似している。6月、江蘇省蘇州で、日本人学校のスクールバスが刃物を持った中国人男性に襲われ、日本人の母親と子供が負傷した。 中国政府によれば、これもまた「個別の事件」であり、「偶発的な事件」だった。 だが、両事件の間に関連性を見る人も多い。その背景には「反日感情」があるというのだ。 中国の学校では、1930～40年代における日本の侵略と残虐行為について、怨恨をかき立てるような教育が続けられている（深圳の事件が、日本が侵略を正当化するために中国東北部で爆発を偽装した柳条湖事件と同日に起きたことを指摘する人もいる）。 日本人学校に通う男児が襲われた後、中国のSNS「微博（ウェイボー）」では、「昔の日本人が蒔いた邪悪な種が邪悪な実を結んだ」「本当の殺人者は日本人自身だ」という投稿も見られた。 その一方、多くの中国人が亡くなった男児の家族に哀悼の意を示し、ネット上の過激な愛国主義の台頭に怒りの声を上げているのも事実だ。 しかし、愛国主義者たちが吐き出す反日的な暴言は、概して政府に容認されている。日本の政治家が台湾支持を表明したり、戦犯を含む日本の戦没者を祀る靖国神社を参拝したりするたびに彼らは激昂し、ヘイト投稿を繰り返す。 日本の尖閣諸島を中国側が「釣魚島」と呼んで領有権を主張している問題も、両国間の軋轢の種のひとつだ。
日本人学校を「悪者」にする動画が人気
激しい反日感情は、中国に数十校ある日本人学校にも向けられている。 本誌エコノミストがおこなった調査によると、2021年後半から2024年9月までに、中国で人気のショート動画アプリ「抖音（ドウイン）」に日本人学校に関する数百もの動画が投稿されていた。 10万回以上再生されたある動画では、日本人学校を「文化侵略」の一部と呼んでいた。「日本人学校がスパイを養成している」というデマを広めている動画もあった。 本誌で分析したところ、日本人学校を非難する動画は、それ以外の動画の2倍の「いいね」を集めていた。
