「ロシアとEU」どちらを選ぶかで衝突…モルドバ国民投票に「異常あり」予想外の結果となった理由
旧ソ連の構成国モルドバで、10月20日、大統領選挙とEU加盟を国家目標として憲法に明記することを問う国民投票が行われた。 【地図】これはヤバい…プーチンの核ミサイル攻撃で狙われる「日本の大都市」の名前 大統領選では親欧米派のマイア・サンドゥ大統領が苦戦し、国民投票ではEU加盟賛成がかろうじて反対派を上回った。この予想外の結果は、何が原因なのであろうか。
国民投票は「予想外」の結果に
EU加盟の是非を問う国民投票では、投票率は51.6％、賛成が50.46％で、反対が、49.54％と僅差の勝利であった。なぜ、ここまで反対票が増えたのか。 EUに加盟すると、EUの方針に従わざるをえず、ヨーロッパでも最貧国の一つであるモルドバには経済的に大きな負担となる可能性がある。そのことの懸念から反対票が多くなったと考えることは可能である。 ロシアのウクライナ侵攻を受けて、2022年3月にモルドバはEU加盟を申請し、24年6月には加盟交渉が始まったが、その推進役のサンドゥは国民の熱狂的な支持を受けることができなかった。 大統領選挙(任期4年)のほうは過去最多の11人が立候補したが、2期目を目指す現職のサンドゥが1位で42.45％、親露派のアレクサンドル・ストヤノグロ元検事総長が2位で25.98％を得票した。過半数を獲得した候補者がいないため、11月3日に、両者による決選投票が行われる。 サンドゥ大統領の再選とEU加盟を阻止するために、ロシアが1500万ドル(約22億円)を投じて有権者の買収などの工作を行ったと、サンドゥ派やアメリカは見ている。
モルドバの歴史を紐解く
ソ連邦では、1980年代後半に、ゴルバチョフが登場し、ペレストロイカを始めると、ソ連邦の各地で民族運動が高まった。 モルドバでは、1989年8月に首都キシナウで60万人参加という大規模な反ソデモが発生し、1990年の国会選挙で民主派が勝ち、6月には「ソビエト社会主義共和国・モルドバ」の主権宣言をした。 1989年11月には南部に住む少数民族のガガウズ人が「ガガウズ自治ソビエト社会主義共和国」を宣言し、1990年8月には独立した。 その直後の9月には、ドニエストル川左岸の地域では、ロシア語を話す住民が「沿ドニエストル・モルダビア・ソビエト社会主義共和国」を創設し、モルドバからの分離独立を目指した。 モルドバは、1991年8月にはモルドバ共和国として独立し、1991年12月21日には独立国家共同体(CIS)に加盟した。その4日後の12月25日、ソ連邦は消滅した。首都の表記も、ロシア語読みのキシニョフからルーマニア語のキシナウに変更された。 ガガウズ自治ソビエト社会主義共和国は、1995年に大幅な自治権を付与されることになり、分離独立の動きは止まった。沿ドニエストル・モルダビア・ソビエト社会主義共和国のほうは、沿ドニエストル共和国を樹立した。 1991年12月の大統領選挙で、対抗馬がなくミルチャ・スネグルが当選し、親ルーマニア的政策をとった。しかし、経済運営失敗し、1996年の大統領選挙では、ペトル・ルチンスキー国会議長に敗れた。ルチンスキーも経済改革を実現できなかった。 2000年7月には、議会が大統領を選出するという憲法改正が行われ、共産党が第一党の議会は、2001年4月に共産党第一書記のウラディミール・ボロニンが大統領に選んだ。ボロニンは、2005年に再選されるが、ロシアとの関係を悪化させ、2009年9月に大統領職を退いた。これを受けて、ミハイ・ギンプ議会議長が大統領代行に就任した。 2016年10月には、20年ぶりに大統領の直接選挙が行われ、親露派で社会党のイゴル・ドドンが親欧米派のサンドゥと戦い、決選投票で勝っている。 2020年の11月の大統領選では、サンドゥがドドンを下した。
