家族で選挙について話してる?―親から子どもに教える選挙のポイント
何を大切にして投票するのか「1票の使い方」を話してみよう
――具体的に家族でどんなことを話すとよいのでしょうか。 たかまつなな: 選挙の時には、自分の1票の使い方、どんな基準で入れるのか、ということですね。アメリカだと、芸能人でもメディアで「私は○○党に入れました」と話す人がたくさんいますが、日本だとまだ難しいです。とはいえ、その中間があると思っています。 具体的な政党名を言わないまでも、例えば、女性議員が増えてほしいから女性の候補者に入れるとか、子育て政策に関心があるから力を入れている人に入れるとか。何を大切にして、投票を決めたのか共有するのです。そうすると、その見方に共感した人が、私もマネしてみようかな、と思うんです。 もし、政治の知識がなくて子どもに伝えられないという方は、教えようとせず、ぜひお子さんと一緒に調べようという姿勢で、視野を広げてあげる手伝いをするのがいいと思います。例えば、自分の考えに近い政党や候補者を知る「ボートマッチ」を一緒にやったり、普段から優しく解説されているこども新聞などを活用して、今の社会問題について話し合ったりすることもおすすめです。 ――親の考えを押し付けたり、子どもが偏った考え方にならないようにするには? たかまつなな: それを気にして話せない人ってとても多いんですが、気にしなくていいと思うんですよ。強いて言うなら、できる限り自分の考えと一緒に反対の意見を伝えるということ。「私はこう思うけど、違う人の意見にはこういう考えがあるんだよ」と言うこととかですかね。 また、子どもが自分の意見を言えるように促すことも大切です。例えば私が取材したイギリスの学校では、法律について学ぶ時に「お酒は何歳から飲めるのがいいと思う?」と議論していました。イギリスでは、「どう思う?」と聞く授業が多いんですよね。実際に「選挙に行ける年齢と同じ18歳がいい」とか「若すぎると健康被害が大きいんじゃないか」とか、子どもたちが議論してました。日本だと「何歳からお酒飲めるでしょう」みたいなクイズになっちゃうと思うんですよね。ルールというものは絶対的なものじゃないし、それを変えてもいいんだというところから習う点が全然違って、先生は正解を求めてないんですよね。 多様な議論をするためには、まずは自分の意見を言い、誰かの意見を叩かない、そういうことは家庭でもできることだと思います。 ――そもそも子どもに「興味がない」「投票に行くのが面倒」と言われてしまったら? たかまつなな: 私の場合は、授業で「選挙に行かないと損だよ」と伝えています。「損している」と言われたら「えっ、そうなの?」と振り向いてもらいやすいからです。 私は芸人として寄席に出るときは、お客様の年齢層が高めなので政治や歴史のネタをやり、学校などの若いお客様の前では「お嬢様学校あるある」というように、お客さんによってウケるネタを使い分けているんです。政治家も同じように、選挙に当選するためにネタを使い分けているんですね。今の日本では高齢者の人のほうが選挙に行っているから高齢者向けのネタ=政策が多くなっていて、逆に若い人が選挙に行かないから若者向けのネタ=政策が少なくなってしまっている状態なんですよ、と生徒に話しています。 東北大学大学院経済学研究科の吉田浩教授のグループによると、若い人の投票率が1%下がると、給付と負担の格差が高齢世代に比べて若い世代は1人あたり7万8000円損しているという試算や、19歳以下の人と60歳以上の人で、一生の間に払う金額と国からもらうサービスなどの差が1億円以上ある、という法政大学経済学部の小黒一正教授(公共経済学)によるデータもあります。