<タンポポ>外来種の侵略を受けた”カンサイ” 受けなかった”トウカイ”
西洋ではタンポポの葉をサラダにして食べるという。その外来種のセイヨウタンポポが日本に入ってきたのは、明治時代初期に札幌農学校(現、北海道大学)で食用の試験栽培をするため、米国から持ち込まれたのが最初だとか。以来、セイヨウタンポポは旺盛な繁殖力で日本在来のタンポポを追いやり、全国に広まった。しかし外来種と在来種の間で、何が起きていたのか。そのメカニズムを、名古屋大学博物館の西田佐知子准教授らの研究グループが明らかにした。 ■外来種の侵略を受けなかったトウカイタンポポ 研究グループは、日本在来のタンポポのうち、近畿地方でセイヨウタンポポの侵略を受けているカンサイタンポポと、追いやられずに、共存しながら頑張っている東海地方のトウカイタンポポに、それぞれセイヨウタンポポの花粉をつけて、受精の様子を調べた。 受粉によって種子をつくる植物では、花のめしべ(柱頭)についた花粉が「花粉管」という長い管をめしべの柱(花柱)の中に伸ばし、先端にある精細胞(精子)が「胚珠」内の卵細胞と受精することで種子ができる。ところが実験の結果、セイヨウタンポポの花粉管は、カンサイタンポポでは胚珠まで到達するのに、トウカイタンポポでは途中で止まり、受精せずに終わってしまうことが分かった。 トウカイタンポポは、セイヨウタンポポの花粉管を拒絶しつつ、後から来る同種のトウカイタンポポの受精は受け入れて種子を作った。それに対して、間違ってセイヨウタンポポを受け入れたカンサイタンポポは、いったんは種子を作り始めたが、途中で死んでしまった。これによりカンサイタンポポは子孫の数を減らし、セイヨウタンポポに追いやられる結果になったという。 ■タンポポは自分のコピーを”クローン繁殖”できる セイヨウタンポポにしてみれば、トウカイタンポポに拒否され、カンサイタンポポも子孫を減らしていくので、自分たちの子孫繁栄の効率は低くなりそうなものだが、そうではない。セイヨウタンポポは他からの花粉によらずとも、自分で種子を大きくして(単為生殖によって)、数を増やしていけるのだ。また、まれにできた在来タンポポとの雑種も、このような自分で自分のコピーを増やす“クローン繁殖”をして増えるのだという。