日本バスケ界の危機。渡邊雄太「責任をもってこの問題に向き合っていく」
日本代表をさらに魅力的なチームにしていく決意
JBAの渡辺信治事務総長は「もしかしたら出られるんじゃないかという希望的観測あった。商業目的で(欠場の発表を)引っ張った意図はなかった」と釈明したが、強化よりも興行を重視した判断だった感は否めない。 ホーバス監督が日本代表に課す練習量がNBAと比べて圧倒的に多いことも選手へのリスペクトを欠くととらえる一因となった。 1次リーグ敗退に終わったパリ五輪から3ヵ月以上が経過した2024年11月13日のメンフィス・グリズリーズ戦の公式会見で、八村が溜まっていた鬱憤を爆発させる。 JBAの強化方針を「お金の目的があると感じる」と痛烈批判。2028年ロス五輪を見据えて契約延長したホーバス監督について「日本代表にふさわしい、男子のことを分かっている、そういう人がコーチになってほしかった」と不満を口にした。 渡辺事務総長は「八村選手の発言は重く受け止めている。五輪前の代表戦を含めてミスコミュニケーションがあり、彼に負担をかけてしまった」と反省。そのうえで「ロス五輪に向けてホーバス監督の下で進んでいくことが変わることはない。最大限バックアップしていく」と強調した。 JBAの三屋裕子会長は、騒動勃発から17日後の2024年11月30日に取材に対応。ホーバス監督を最大限バックアップすることを強調したうえで、八村を念頭に置いた海外選手との連絡窓口を一本化して責任者を明確にするテコ入れなどを発表した。 渡邊の会見は三屋会長の対応の2日前。八村とホーバス監督の亀裂が深まるのを見かねて報道陣の前に立つことを志願した。 「最初、僕は表に出るつもりはいっさいなかった。水面下でやればいい話と思っていたが、これ以上ことが大きくなってトムに負担がかかるのが嫌だった。塁にもNBAのシーズンに集中してほしい。ふたりがいい関係を築けるようコミュニケーションを活発に取れる状態にしたい」 事前に八村には報道陣の前で騒動に言及する旨を報告し「塁と対立をする気はない」と伝えた。そしてホーバス監督について、「日本代表の監督として誰よりもふさわしいと思っている。今代表に関わる選手、スタッフのほとんどがそう思っていると思う」と支持を表明した。 「今回の件で万が一、トムが辞めてしまうようなことがあれば許せない。トムが(身を)引くようなことがあれば日本代表は崩壊していくと思う」 報道陣からの質問を受ける時間は設けられなかったが、熱弁は約16分に及んだ。日本バスケ界を救うために立ち上がった男気ある会見。最後は日本代表をさらに魅力的なチームにするという強い決意で締めくくられた。 「今後さらに強い日本代表を皆さんにお見せできたらと思っている。僕も代表の一員として責任を持ってこの問題に向き合うので、引き続き応援をよろしくお願いします」 渡邊雄太/Yuta Watanabe 1994年10月13日香川県生まれ。香川・尽誠学園時代に全国高校選抜優勝大会で2011年から2年連続準優勝。米ジョージ・ワシントン大を経て2018年にメンフィス・グリズリーズと契約し、日本人ふたり目のNBA公式戦出場を果たす。ラプターズ、ネッツなどでNBA通算213試合に出場し、1試合平均4.2得点、2.3リバウンド、0.6アシスト。2024年夏にBリーグの千葉ジェッツに移籍した。2021年の東京五輪は日本代表の主将。ポジションはスモールフォワード。身長2m6cm、98kg。
TEXT=木本新也