名ばかりの透明性… 橋本聖子新会長選考に残った疑問…本当に議論は尽くされたのか?
東京五輪・パラリンピック組織委員会の新会長に前五輪担当相の橋本聖子氏(56)が就任した。女性蔑視発言で森喜朗前会長(83)が辞任して以来、わずか6日でのスピード決着。後任の有力候補だった元日本サッカー協会会長の川淵三郎氏(84)の話が潰れた際、「密室人事」と「森院政」が問題にされ、新会長の選任にあたっては「透明性のあるプロセス」が掲げられていたが、その選考過程は透明とは、ほど遠い矛盾だらけのものだった。“出来レース”の汚名を返上するには、橋本氏が会見で示したように「安全、安心な五輪の開催」という結果で評価を得るしかないだろう。
わずか1時間半の会議で1本化
何もかも不透明だった。 17日の候補者検討委員会で後任会長候補を橋本氏に1本化。同日午後6時に検討委員会の座長である御手洗冨士夫氏(組織委員会名誉会長)が電話で打診。この日、昼過ぎに承諾を得たことで、評議員会での理事に選定、そして理事会での決定という正式な手続きを経て橋本氏を新会長に選任した。 この日まで御手洗氏以外の候補者検討委員会の人数もメンバーも、そして3度開催された会議の場所も時間も審議の中身もすべてが非公開である。複数のメディアがメンバーや会議の場所、審議時間などについて正確に報じてきたが、それらはオフィシャルなものではなかった。メンバーや内容については、会長決定後につまびらかにすると言われていたが、この日、組織委員会からリリースされたものは、8人の検討委員会のメンバーの名前と橋本氏の選定理由にメモ程度の簡単な経緯だけ。議事録などは一切公開されなかった。 御手洗氏の会見の質疑で候補者を一人に絞り込んだ17日の第2回の委員会で、メンバーがそれぞれ1人以上の会長候補を推挙して議論したことや、そこに座長は参加せず、7人中6人が、橋本氏の名前を書いていたことなどが明らかにされたが、本来、文書で公開すべきことが説明されておらず透明性とはほど遠かった。 的をついた質問がなければ、これらも闇のままだ。 御手洗氏は「終わった後にメンバーの名前も公開した。ああいうシステムでも透明性は損なわれなかったと思う」と自画自賛したが、会見では、複数の矛盾点が浮き彫りになった。 御手洗氏は、9人挙げられた候補者を橋本氏一人に絞り込んだ17日の会議を「徹底的に議論した。5つの資質の相対的に弱いところ、強いところが議論の対象。(様々な)意見をいただきながら予定時間を超える審議となり全員一致でふさわしい結論に達した」と評した。だが、実際に審議されたのは、わずか1時間半。「1時間半で徹底した審議と言えるのか?」との質問を受けると「前日のクライテリア(5つの判断基準)からいろんな議論をしている。期せずして(推挙する会長候補を)書いた紙に7人中6人に橋本氏の名前があった。書かなかった人は、新聞で記事(就任を固持)を見て、書いても無駄だと思って書かなかった。一人ひとりが橋本氏の感想、要求を述べるだけ。効率的で予定通りに1時間半で終わった」と、先ほどとは違った答えを返した。「予定時間を超えた」が、いつのまにか「予定通り」に変わっていた。「9人について一人ひとり推薦の弁を話した」とも言うが、議論を尽くしたというよりも、橋本氏の1本化の確認作業をしたに過ぎなかったのだ。