日本全国で「食文化が違いすぎた」 北海道は"納豆に砂糖"、長崎県の"白い鉄火巻" …東西食論争も勃発
■“日本一高い”おでんの具材
寒くなるこれからの季節に恋しい鍋物にも、違いはあるのか。多くの声が寄せられたのが「東西おでん対決」だ。 「おでんの原型は、室町時代に流行した、木綿豆腐をあぶって食べる“豆腐田楽”です。江戸時代の屋台から煮込むスタイルに変化し、おでんに発展。関西地方に伝わって、“関東煮”と呼ばれるようになりました」(前出のフードジャーナリスト) 魚粉がかかる静岡おでんや愛知のみそおでん、富山のとろろ昆布をトッピングした富山おでんなど、各地にさまざまな有名おでんが存在するが、中でも注目は、石川県の金沢おでんだ。 「石川県は、人口あたりのおでん屋の軒数が日本一。そして、冬季限定で多くの店で、香箱ガニの甲羅に身や内子・外子を詰めた“カニ面”を提供しています。昔は大衆の食べ物でしたが、カニの高騰で、今では“日本一高いおでんの具”と呼ばれています」(椿氏) 対して、西は関西の牛すじ、沖縄のテビチ(豚足)など肉類を入れるのが特徴。肉に関してはこんな声も。 「東日本は、カレーや肉じゃがに豚肉を入れるんですよね? 貧乏くさい(笑)。西日本は、どちらも牛肉です」(兵庫県・60代男性) 実は、東西で食肉の嗜好は異なるのだ。 「明治時代の文明開化を機に肉食が解禁された際、最初に普及したのが牛肉でしたが、大正時代には、東京でカツカレー、カツ丼が相次いで誕生。豚肉料理がブームになり、その名残で関東では豚肉、関西では牛肉が主流になったといわれています」(前出の郷土料理研究家) “すき焼き応援県”を宣言する群馬県の一部では、“豚すき焼き”も愛されているが、ご馳走の定番・すき焼きを巡っても、東西のこだわりが大激突。 「明治時代、神奈川県の横浜で“牛鍋”、京都で“すき焼き”を提供するお店が誕生しました。関東は割り下で煮る“鍋”スタイル、関西は、砂糖としょうゆで焼く“焼肉”スタイルが親しまれています」(前同) 甲乙つけ難いが、西軍から、こんなひと言が。 「京都には、池波正太郎らが足しげく通った『三嶋亭本店』など名店がたくさん。本物のすき焼きが食べられます」(京都府・70代男性) 各地のご当地すき焼きを楽しむのも一興だ。 「香川県や徳島県は、すき焼きの具に大根を入れます。他県民は驚きますが、だしと肉のうまみを吸ってジューシーな食感になった大根は絶品です」(椿氏) 福島県と熊本県の「馬刺し対決」も見逃せない。 「福島県の会津若松市は、熊本県にも負けない馬の名産地で、馬刺しが名物です。昭和の大レスラーの力道山が、同市へプロレス興行で訪れた際に生で馬肉を食べたのが始まりで、会津の馬刺しは辛みそ、熊本は甘い味の九州しょうゆで食べるのが主流です」(前同) 独自の馬肉料理を出すところもある。 「長野県伊那市の郷土料理に、“おたぐり”という馬のホルモンの煮込みがあります。馬の腸は20~30メートルあり、手繰り寄せながら塩水で洗う下処理をすることから、料理名がついたとか。しょうゆやみそなど、味つけは店で異なりますが、酒の肴に大人気です」(同)