男たちが自分で股間をまさぐり始める…伝説の踊り子が客たちを手玉に取って「復讐」したかったワケ
1960年代ストリップの世界で頂点に君臨した女性がいた。やさしさと厳しさを兼ねそろえ、どこか不幸さを感じさせながらも昭和の男社会を狂気的に魅了した伝説のストリッパー、“一条さゆり”。しかし栄華を極めたあと、生活保護を受けるに至る。そんな人生を歩んだ彼女を人気漫才師中田カウス・ボタンのカウスが「今あるのは彼女のおかげ」とまで慕うのはいったいなぜか。 【漫画】床上手な江戸・吉原の遊女たち…精力増強のために食べていた「意外なモノ」 「一条さゆり」という昭和が生んだ伝説の踊り子の生き様を記録した『踊る菩薩』(小倉孝保著)から、彼女の生涯と昭和の日本社会の“変化”を紐解いていく。 『踊る菩薩』連載第8回 『「ストリッパーは娼婦とは違う」若き日の中田カウスが驚いた、伝説のストリッパーの「狂気的」なプロ意識』より続く
一条の芸の力
3ヵ月にわたり一緒に舞台に立ってきたカウスはすっかり一条と打ち解けた。彼女は普段、口数が多いほうではないが、酒を飲むと多弁になった。そんなときの一条は、話を膨らませたり、明らかに嘘とわかるような話をしたりした。これは彼女と付き合った者の多くが指摘している。あるとき一条は、求められたわけでもないのに、カウスにこう語っている。 「最初の旦那はね、日本で初めてバラバラ殺人をやって、刑務所に入った人なの。もう出てこられない。最後の面会であたしはこう言ったわ。『生まれ変わっても一緒になってね』と。カウスちゃん、あそこでは、こんな言い方しかできないでしょう。そしたら、旦那はどう言ったと思う? 『もう一度、私に触りたい、私の身体を触りたい』って」 周りの者はいつの間にか、吸い込まれるようにして一条の話を聴いている。カウスはこうしたとき、師匠であるダイマルとの共通点を見ていた。 「うちの師匠も嘘ばっかりで楽屋を笑わしまくってました。座敷芸、楽屋芸というんです。嘘で引き込んでいく。芸の力です。嘘なんやけど面白い。嘘とわかっていても聴きたい。そういうもんなんです」