沖合の小さなサバまで一網打尽にする日本…「巨大サバが釣れまくる」ノルウェーと日本の決定的な差
大西洋のサバ漁では、EU各国とも漁業者や漁船ごとに厳格に漁獲枠が設定されて、資源管理が効力を発揮してきました。また各国の漁船や生産設備はノルウェー並みに進化しています。その結果、大西洋で漁獲されるサバは全体的に品質が向上しているのです。 ■「釣りもの」より「巻き網もの」が高いノルウェーサバ ちなみに「巻き網もの」と聞くと「釣りもの」より品質が劣るというイメージが一般的かと思います。ところが意外かもしれませんが、ノルウェーではサバの価格が「巻き網」のほうが「釣り」より高いのです。その違いは「品質」です。マグロと異なり、巻き網で網を狭めていく過程で魚が苦しがって打ち身になっていくということはありません。
獲りすぎてタンクの中の魚が多くなり、サバが冷えていなければ品質評価が落ちて価格が下がってしまいます。また大量に水揚げすると価格の下落を招きやすいということもあります。そこで2000トン前後の魚を一度に獲って運べる巻き網漁船であっても、500トン前後以下に一回の水揚げ量を抑えることがほとんどです。 水産業を成長産業にしているノルウェーでは設備投資が毎年進んでいます。今ではサバの処理能力は1時間に50トン程度が普通です。凍結能力は一日で1000トンを超える、日本とは比較にならない規模の巨大な冷凍工場がいくつもあります。そこで数百キロから数トン単位で水揚げされる釣りサバでは、生産効率が悪くなってしまうのです。
また、さまざまな漁船が漁獲した釣りサバをまとめて生産すると、品質のばらつきがあって管理が難しくなってしまいます。かえって一度に数百トン水揚げされる巻き網もののほうが、品質は安定しているのです。 日本でも大きなサバが釣れるようになる方法はあります。釣れるサバが小さかったり、釣れなくなったりしたのは、資源管理の仕方に問題があるからです。ですからそれを変えればよいのです。 しかし簡単に思えることでも、社会の資源管理に対する「正しい理解が進んでいない」という大きな障害があります。このため、本当のことを言うには「勇気」がいるという、おかしなことになってしまっています。