ラグビー・オールブラックスの強さの秘密はクリケット? 大谷翔平「二刀流」にも通ずるクロストレーニングの効能とは
クロストレーニングは能力を拡大する
複数の武道を修行することは、一歩間違えると、どれも中途半端な稽古となるデメリットがあります。ですが剣道なら剣道と、自分の中心とするものをしっかり定めておけば、得られるメリットの方が大きいと私は考えます。 なぎなた、銃剣道の木銃、短剣道の小刀。武器によって、間合も違えば、体の使い方も微妙に違います。武道という共通項を持つもののなかで、複数の異なるアプローチを取ることで、自分の剣道の技術を、多角的に点検することができます。剣道一本ではできない工夫ができるようになり、身体能力の可能性を広げてくれるのです。 「剣道対なぎなた」「剣道対銃剣道」といった異種試合も、よい経験となります。なぎなたも銃剣道の木銃も、リーチで竹刀に勝り、攻撃パターンも剣とは大きく異なります。同じ段位の対戦なら、剣道家がたいてい負けます。「どうすれば他の武器に勝てるか?」。その研究が工夫に繫がります。 日本では「多芸は無芸」と、何かひとつに専念する一本主義を重んじる伝統があります。ただ最近は、大谷翔平のような「二刀流」の選手がメジャーリーグで活躍し、スポーツの練習でも、複数の競技を横断的に練習するクロストレーニングが一般的になってきました。 私の母国のニュージーランドでは、季節ごとに複数のスポーツを行なうことは普通でした。週に2、3回しか練習しないので、私も高校時代、サッカー、テニス、バスケットボール、バレーボール、クリケット、そして弁論部と、6つの部活に所属していました。 それぞれ週1~2回の活動日で、たとえばサッカーが月曜と水曜、バレーが火曜と木曜、バスケットが土曜といった具合です。大きなボールから小さなボールまで使うことができて、手と眼のコーディネーションや、体の使い方など、球技全般に共通する運動神経が養われます。毎日サッカーをやらなくても、他の球技をやることで、サッカーもうまくなっているのです。 1996年に、国のラグビー代表チームのオールブラックスがプロ化するまでは、ラグビーの代表選手が、同時にクリケットの代表選手であることも珍しくありませんでした。 異なるジャンルのクロストレーニングを行なうことで、その人の基本的なパフォーマンスが向上し、その人独自の多様性が開花します。それは武道でもスポーツでも、学問や芸術でも同じことではないでしょうか。 私の場合、武道の稽古が、研究という仕事に直結しているので、特殊な例だとは思います。普通にビジネスパーソンの仕事をしていたら、4つも5つも掛け持ちすることは無理でしょう。それでも自分が熱中できること、興味の持てることならば、ひとつと言わずに、ふたつみっつやってみればよいと思います。 バランスよくそれぞれをこなし、多角的な視点を持つことで、自分のキャパシティを掛け算のように広げることもできるはずです。
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