イスラエル、シリアに攻撃継続-ダマスカス近郊まで戦車侵入か
(ブルームバーグ): イスラエルはシリアの軍事拠点に対する攻撃を強めた。10日早くに数百の目標を攻撃し、シリア領内深くまで部隊を侵入させた。
英国に拠点を置くシリア人権監視団によると、首都ダマスカスを含むシリア各地の軍事基地や倉庫、兵器庫など少なくとも310カ所が過去2日間で標的となった。イスラエル軍のラジオ局は匿名の国防当局者の話として、空軍史上最大級の攻撃と伝えた。
前日にはシリアとの国境沿いの緩衝地帯を掌握。過激派の手に渡るのを防ぐべく、シリアの化学兵器およびミサイル貯蔵施設を空爆したとイスラエル軍は主張した。
イスラエルの緩衝地帯占拠とシリアへの継続的な攻撃は、エジプトやサウジアラビアなどアラブ諸国の怒りを買っている。サウジは声明で、イスラエルの攻撃は「シリアが安全保障と安定、領土保全を回復する機会を妨害する決意」を示していると糾弾。エジプトも、イスラエルは「シリア領のさらなる占領」を狙っていると非難した。
地上にいる人々の情報網を通じてシリア内戦の監視を続けているシリア人権監視団は、イスラエル軍の戦車がダマスカスの南西部近郊で目撃されたとも報告。目撃されたのはダマスカスから十数マイル離れた地点だという。
イスラエル軍報道官はX(旧ツイッター)で、同国軍は緩衝地帯やシリアとの国境付近に展開しているとしつつ、一部のメディアで出回っている「ダマスカスへの進軍や接近は完全な誤り」だと主張した。
イスラエルはアサド政権下のシリアと正式には交戦状態にあった。過去1年にはいくつかの侵犯があったが、国境は比較的平静を保っていた。
イスラエルのカッツ国防相は、同国軍の恒久的な駐留を伴わない防衛地帯をシリア南部に設置することを明らかにした。この地帯には武器およびテロの脅威を存在させないという。
イスラエルは、週末にアサド政権を転覆させたシリアの反体制派を警戒している。反体制派を主導する武装組織「シリア解放機構(HTS)」は過去に国際テロ組織アルカイダとつながりがあり、米国など多くの国がテロ組織に指定している。