「妻の葬儀で聞こえにくさを痛感」70代男性の実例をもとに<補聴器>購入から活用までのプロセスを専門家が解説
大量の新聞記事の切り抜きが!
Aさんはおもむろに、引き出しを開けて購読している新聞記事の切り抜きを差し出し、娘さんに見せてくれたといいます。 なんとその記事は、私が補聴器や聞こえに関して発信していた連載でした。 お父様は、なんとかしなければと思ってはいたものの、「悩んでいる姿を見せたくない」「娘には頼りたくない」という父親としてのプライドが邪魔をして、なかなか自分から言い出せずにいたご様子。 じりじりと募る補聴器への想いとともに、たくさんの新聞の記事を大切に引き出しにしまい込んでいたようです。 娘さんは意を決して「私がこの連載の人に問い合わせてみるよ!」とお父様に伝え、当社にメッセージをくださったのでした。
初めて補聴器専門店へ「頑固な父親が一歩踏み出した日」 初めてご来店頂いた日、無口なお父様のことを気遣って、あまりしゃべりすぎないようにしている控えめな娘さんの様子も印象的でした。 最初のうちは、Aさんは「困ったことはない」とおっしゃっていましたが、会話を重ねるうちに心を開いてくださって、日常生活の中で実際に聞こえにくいシーンをぽつりぽつりとお話ししてくれました。 Aさんは、3年くらい前から小さな声が聞きづらくなり、打ち合わせのような複数の人数で会話をするとき、言葉が聞き取れなくなっていたそうです。それでも補聴器をつけることは「恥ずかしい」という思いが強くあったといいます。 補聴器をつけることのメリットについて丁寧にご説明させていただいたところ、Aさんも納得されたようです。いくつかの補聴器を試していただき、その中から気に入ったものを1週間使っていただくことになりました。
1週間後「テレビの音量が下がった」
1週間後にふたたびお会いすると、まだ完全に聞こえの悪さが解決したわけではありませんが、テレビの音量を以前ほど大きくしなくても聞こえるようになったと嬉しそうでした。また、日常生活でタイマーやアラームの音が聞こえるようになったとのことでした。 娘さんが感じたのは、これまで父親と歩きながら話するときは、たいてい何度も聞き返してきて生返事のことが多かったのに、店舗にいらっしゃるまでの道中、補聴器をつけて歩いていると、会話がとてもスムーズだったとのこと。 私が最初にお会いしたとき、Aさんは不安そうで硬い表情をされていましたが、来店されるたびに積極的に補聴器に関する質問をされるようになり、「気になっていた別の補聴器も試してみたい」と、リクエストをいただくようになりました。